変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札 第二章>大手参入で入札競争激化

2002/12/02 16:18

週刊BCN 2002年12月02日vol.968掲載

 大手メーカーが自治体向けソリューションを相次ぎ投入している。各社が当たり前のように自治体向けソリューションを提供する中、入札の現場ではどんな変化が起こっているのか。

注目集まり、逆に中小参入しにくく

 NTT東日本では、本社法人営業本部に「e-Japan推進部」を設置し、支店への支援も含めたe-Japanビジネスへの全社的営業力の強化を図る体制をつくり、全17支社に「e-Japan推進室」を設置。地域に密着した営業体制をとった。

 マイクロソフトとアクセンチュアは昨年9月から協業し、電子申請・届出プラットフォーム、「eGA(アクセンチュア・イーガバメント・アクセラレーター)」を提供しているが、その.NETフレームワーク対応版「eGA.NET」が岐阜県の電子県庁プロジェクトに採用された。アクセンチュアではマイクロソフトの技術協力により、2002年度中に電子申請・調達、文書管理の総合的な自治体向けソリューションを完成させる計画だ。

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、ドリームアーツ、クワンティの3社で地方自治体向けのソリューション「地方自治体IT Pack」を12月から販売する。Linuxベースのこのパックを活用すれば、自治体側はプログラミングの知識なしにEIP(企業情報ポータル)構築が行える。3社ではこの製品を拡販していくために、システムインテグレータなどを対象にセミナーを開催する計画だ。

 こうした大手ベンダーの攻勢により、電子政府関連の案件は競争がより激化する傾向が如実に表れている。

 中小のITベンダーからは、「従来であれば大手は参入してこない規模の案件にまで大手が参加するようになってきた」という声があがる。

 競争が激しくなるのは、公正な入札という面から見て歓迎すべきことではあるが、「逆に少額案件においても大手が落札するケースが増えているのではないか」という指摘を聞くと、メリットばかりあるわけではないことがわかる。

 情報システム入札の問題が指摘され、制度の変更なども行われた結果、「かえって中小企業には参入しにくいのが、最近の電子政府系の案件」と、ある中小企業側では苦笑いする。従来に比べて、前向きに変わっていく方向にはあるものの、依然として情報システムの入札は中小のITベンダーが参入するには高い壁になってしまっている。

 競争が激しくなって、さらに幅広い業者が参入しやすい入札にしていくことが重要であろう。

 地方自治体からは、「業者とのコミュニケーションはスムーズに行われているとは言い難い」との声があがっており、これに応えていくこともIT業界として大きな課題である。業者にとっても、自治体側にとっても開かれた入札と情報システムであることが必要である。(三浦優子)
  • 1