WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第129回 IBM、イングラムと提携

2002/11/11 16:04

週刊BCN 2002年11月11日vol.965掲載

 米国有力ITメーカーは長引くIT不況対策として、SMB(中小企業)市場開拓に力を入れ始めた。IBMもその1社で、同社は米国に15万社の卸し先システムインテグレータ(SIer)、VARを擁する巨大ディストリビュータ「イングラム・マイクロ」と提携した。IBMはイングラムの全米SIer組織「ナショナル・サービス・ネットワーク(NSN)」と「ベンチャーテック・ネットワーク(VTN)」会員向けにSMBサービスソリューションを提供することを02年10月発表した。

米SMBを開拓

 多くのイングラム会員SIerは、このIBMとの提携を「メーカーとチャネル関係に革新をもたらす」と歓迎する。IBMディストリビューション部門フランク・ビタグリアーノ副社長は、IBMのSMBサービス戦略を次のように説明する。「IBMグローバルサービスの狙いは、イングラムの両ネットワーク会員にIBMソリューションをSMBに届けてもらうことだ。その狙いはきわめてシンプルで、IBMのSMB向け商売を伸ばすこと、即ち米SMB市場カバー率を高めることだ。SMB市場でもIBMブランド力は強いはずで、SIerはIBMブランドをフル活用してほしい」

 IBMとイングラムの共同プロジェクトはまだ計画途上で、IBMは03年1月の新年度からこの計画を実行に移す。イングラムVTN会員、ヨークシステムズのドン・ファントバニー社長は、「IBMが当プログラム参加SIer向けに、IBMソリューション教育に力を入れており、資格取得者数に応じるインセンティブも計画しているようだ。多くのわがSEもIBM資格は入手したがっており、取得者へのインセンティブを現在考えている。とくにIBMグローバルサービスのコンサルタントがわれわれとSMBに同行セールスしてくれるので、SMB経営者への影響力も期待できる」と語る。

 IBMグローバルサービスは、同社が重点戦略のLinuxサーバーがSMBのウェブシステムのフロントエンドだけでなく、販売や在庫、顧客管理のミッションクリティカル分野に普及することも期待している。Linuxによってソフトライセンス料も安くなり、それだけSIerの利益幅が拡大するからだ。このためIBMは、SMB向けにSIerのウィンドウズ技術者をLinux要員に育てる短期プログラムも実行し始めた。

 「このIBM計画は、SMB向けSIer経営者の心を完全に捕らえた」とイングラムの幹部も語る。会員の1社、シカゴ・ソリューションズのアーク・マイリーCEOは次のように語る。「われわれは長い間IBMからの提案を待ち望んでいた。IBMの高い信用力をSMB向けSIer市場に持ち込めることは、ビジネス拡大に直結する。SMBのウェブ武装はまだこれからの段階で、IBM計画はこれに間に合う。われわれだけでなくIBMにとってもメリットは大きい。いまやチャネルフレンドリーといえるメーカーはもはやIBMだけだ」(中野英嗣●文)

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