大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第56話 悲観的になるな

2002/11/04 16:18

週刊BCN 2002年11月04日vol.964掲載

高知工科大学 副学長 水野博之

 生来、大変なせっかちである。大阪弁で言うところの「イラチ」であって、何時も前へ前へと進もうとする。朝飯を食べている時、昼飯のことを考える。1つのことを2つにも3つにも多様化していろいろと空想する。どうしてそうなったのかはよくわからないのだが、小さい時からそうであったようだ。

 このように現実が夢想のなかにいるから夢もまたよくみる。覚めてみると、ばかばかしい程のものだが、時々夢と現実が区別できなくなってしまうことがあって、幼い頃、早々と寝た私は夜の団欒をしている台所に2階からのこのこ降りてきて、「敵機が頭上にいるのに、このようにアカアカと電灯をつけて騒いでいるとは何事か!!」と訓示をしてまたトコトコと2階へ上がってそのまま寝たそうである。当時は日米戦争が始まった頃で、恐らく海軍大将にでもなった夢を見ていたのであろう。

 いまでも物事をいろいろと考えるくせは続いていて、何時間でもそのなかに入ることができるから、おおよそ時間に退屈することはない。夜なんか、いろいろ考えているうちに何時の間にか眠ってしまうから、睡眠薬にもなっているのであろう。夜いろいろ考えて眠れない、という人がいるが、それは悲観的に考えるからであって、ロマンティックに物事を良いように考えるくせをつけないからである。

 そんなこと言うけど、それはお前が本当の苦しみを知らないからだと言われそうだが、そうですかね?人生70年も生きるといろいろな事がある。家族が原爆にあったこともあるし、病気で死にかけたこともある。しかし、今から思うと、そんななかでも何時も夢だけはもっていたな。夢を見なくなった時こそ、いよいよ、という時なのだろう。実際に、悲観から物事が成り立った例は知らないのである。(伊丹城跡にて)
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