視点
行政のBPR
2002/10/28 16:41
週刊BCN 2002年10月28日vol.963掲載
真の電子政府を実現するには、既存の業務形態をそのままデジタルに移行しただけでは、何の意味もなさない点はよく指摘される。組織の縦割り体質にメスを入れ、水平指向のもと、他の役所や民間に委ねるべきものは委ね、予算の最適配分をもう一度根本的に議論し直すといった大胆な行動が求められる。1993年、ルイス・ガースナー氏をCEOに迎えた米IBMは、90年代後半に入り自社の抱える各事業を「市場の魅力」「相対シェア」という2軸で分類し、次なる投資行動を判断するポートフォリオ・マネジメントを導入した。
ここでいう、市場の魅力とは11%以上の成長が見込まれるか否か、相対シェアについてはリーダーの位置にあるか否かを指し、この2軸で4つのマトリックスを区分。各事業を「Invest(投資)」、「Optimize(最適化)」、「Reassess(再評価)」、「Exit(退出)」のどの領域に入るかに分類した。「Exit」は文字通り市場の成長が見込めず、シェアも後塵を拝している事業が入れられた。それまでIBMの経営には、景況悪化時でも投資を全事業で一律にカットするものの、「Exit」という選択肢は存在しなかったという。だがその後、投資の選別を厳格化し、結果、ルータ事業からの撤退や、最近ではHDD事業を日立製作所に売却している。
「IT化の歴史を振り返れば、まず銀行など金融の電子化から始まり、次いで大企業が新しいビジネスの実現や業務改革に活用した。これからは中小・零細企業、そして行政のIT化が焦点になる」(梶原拓・岐阜県知事)限られた予算を効率的に活用していくうえで、BPR的な発想に立ち最適の投資判断を下せる人材をいかに育成できるか。今後の行政の課題であろう。こうした人材は、決して技術に精通している必要はない。本来の目的を見極め、的確な舵取りできる能力が重要だ。
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