e-Japan最前線

<e-Japan最前線>17.山形県鶴岡市の情報簡易端末

2002/10/28 16:18

週刊BCN 2002年10月28日vol.963掲載

 山形県鶴岡市。日本有数の穀倉地帯である庄内平野南部に位置する人口約10万人の城下町。今年1月から同市の単独事業として、NTTコミュニケーションズと松下電器産業が新たに開発した電話機付き「かんたんインターネット端末」約500台を、市民を対象にモニター利用してもらう「インターネット簡易操作端末普及整備事業」がスタート。11月からは、この端末を使って新たな実証実験を開始することになった。

エージェントサービスの実証実験

 「現在のインターネット利用がパソコン中心となっているため、パソコンが苦手でインターネットを利用しない方々を主なターゲットとして利用普及を図ろうとするもので、機器操作の面でのデジタルデバイド解消を狙っている」(総務部企画調整課・高坂信司係長)。かんたんインターネット端末は、パソコンが苦手な利用者向けに工夫したタッチパネル式の端末で、電話回線をつなぐだけで面倒な初期設定をせずにインターネットが開始できるのが特徴だ。さらにICカードを使った高度な認証・暗号化機能も装備しており、金融端末としても利用できる。

 今回の鶴岡市でのモニターテストを通じて、NTTコミュニケーションズでは「10万円を大幅に切る価格」(遊佐洋取締役eスマートトラストサービス部長)での商品化をめざしているという。11月から行う実証実験は、同端末が装備している「エージェント機能」を使った情報提供サービスの実験である。エージェント機能とは、端末への情報配信やブラウザやメールなどの設定を、オペレーターがネットワークを通じて遠隔から代行できる機能。

 電子メールによる情報配信に比べると、相手の端末にアプリケーションとして搭載されているカレンダーなどに直接、情報を書き込むことができるため、情報到達度は高くなる利点がある。ホームページのアドレスを打ち込むなどの端末操作が難しい利用者にとっては便利な代行サービスだ。

 今回の実験では、3つのメニューを用意する。まず鶴岡市の広報誌で提供している地域のイベント情報を、リンク付きで端末のカレンダーに配信。詳しい情報が見たければ、その情報にタッチすると関連のホームページに飛ぶ仕組み。「少し実験が進んだら、広報誌に限定せず、地域コミュニティサイト“鶴岡タウンねっと”に書き込みのある情報の配信する予定」(高坂係長)だ。

 次に市民から要望の多い生活関連リンク集を充実させて、希望のあったURLを希望者の端末のブックマークに設定するサービスを提供する。3つ目には、鶴岡タウンねっとを活用して市民から写真やイラストなどの壁紙を募集し、希望のあった壁紙を端末に配信・設定する。いずれにしても、利用者が希望した場合に情報を配信するサービスであり、パソコン利用者に対しては同様のサービスを提供するかどうかは要望などを聞いて検討するという。また、こうした機能を民間に開放するかどうかも、利用者側の反応を見ながら検討する考えだ。

 「エージェント機能は、受信者が迷惑だと思うような内容にはならないようにすること、すべての住民に対するサービス提供は困難であろうこと、などに留意する必要があるだろう。有効な利用方法は実験を進めていくなかで探っていきたい」(高坂係長)。同市でも、インターネットを地域コミュニティ活性化のための有効なツールと位置づけており、地域のコミュニティセンターを中心に普及を進めているところだ。そうしたなかでパソコンが苦手な人たちへの情報配信をどのように進めていくかは、自治体共通の課題と言えるだろう。(ジャーナリスト 千葉利宏)

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