WORLD TREND WATCH
<WORLD TREND WATCH>第125回 「OS TCO」試算の動き
2002/10/14 16:04
週刊BCN 2002年10月14日vol.961掲載
MSバルマー社長発言の波紋
第1はOSの購入コストである。これまでと異なり、マイクロソフトはOS売り切りでなく長年にわたるライセンス料金に切り替えつつある。従って1回の支払いは安くても、これを5年、6年払い続けた場合、想像以上にウィンドウズライセンス料が巨額になるかもしれないと同氏は警告する。買い取り方式ではマイクロソフトの高価格を黙認できても、長期ライセンスでは許されないことも考えられる。第2はLinux対応の要員の育成費だ。これに関しても同氏は次のように助言する。「Linuxを採用する場合にはどこでも、ウィンドウズに熟知した要員の再教育投資が議題になる。しかし、どこのIT部門でも、社内では決して公言しないが、Linux熟練の技術者が何人もいる筈だ。彼らをリーダーにすれば、教育投資も低く抑えられる」そして第3としてOS経費試算時に一番重要な項目、運用・サポートの経常的社内コストをあげた。これは新システムなどの外部開発委託コストでなく、社内で発生するコストの比較だ。
同氏はこのコスト比較ではLinuxの次のような特徴が、Linux導入時のコストを低く抑えると主張する。(1)Linuxの安定度、(2)ウイルスに攻撃される回数が少ない、(3)OSのリブートやリロード工数の削減。これらの要因によって、社内サポートコストはマイクロソフトのOSに比べ予想以上に安くなる筈だと強調し、さらに次のように補足した。
「Linuxを採用すれば、そのシステムは予定通りの正常運転を常時続ける。これによってIT部門はウィンドウズでは絶え間なく発生するトラブルに対応する要員コスト発生もLinuxではなくなる。OSのTCO計算ではこのほかにも多くの検討項目もあろう。TCO計算に組み入れるべき要素もどんどん変化している。しかし現時点ではオープンソースがほかのどんなメーカー製OSよりも、最もコスト効率の良いソリューションであることを断言できる。しかし、人の計算に頼ってはいけない。CIOは自らの手でOSのTCO計算を行い、自らを十分納得させることが重要なのだ」
さらにIBMの戦略担当副社長、アービング・ラダウキーバーガー氏もLinuxの利点について次のように発言する。「オープンソース最大の利点は、OSベンダーのOS戦略にユーザーが影響されなくなることだ。ベンダー製では、ベンダーが現OS開発継続を止めれば、やむなく新OSに移行させられる。しかしオープンソースではユーザーの意向だけですべてのOS利用計画を決定でき、これだけでもTCOは大きく下がる」。(中野英嗣●文)
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