開眼できるか! 中小IT化ビジネス

<開眼できるか! 中小IT化ビジネス>7.始まる通信環境の変革

2002/10/14 16:04

週刊BCN 2002年10月14日vol.961掲載

 企業のIT化の水準を考える時、いつでもインターネットに接続可能で、公開サーバーを自社運用できる固定IPアドレス付き常時接続回線を導入しているかどうかが、1つの重要な目安となる。もちろん大手企業では、極めて一般的な環境である。

 だが従来、中小企業で常時接続回線(固定IPアドレス付き)を整えているところは少なかった。その証拠に、代表的な常時接続サービスの「OCNエコノミー」でさえ、5万回線に達していない。法人格の企業だけでも250万社あることを考えれば、いかに少なかったかが分かる。

 ある通信事業者の営業幹部は、「月額3万円程度まで料金が下がっても普及率は微々たるもの。根本的に需要が小さいのではないか」と諦め口調で語る。

 確かに、ホームページや電子メールの利用だけならば、低価格なホスティングサービスがある。その場合、常時接続さえできればよく、必ずしも固定IPアドレス付きである必要はない。

 では本当に、中小企業は常時接続回線を欲していないのだろうか。決してそんなことはないはずである。中小企業でも複数拠点で営業する企業は少なくなく、その拠点間を専用線で結ぶニーズがあるからだ。

 例えば、東京と大阪に事務所を構える企業が、その500kmの間を従来の専用線サービスで結ぶと何十万円もの月額料金がかかった。

 そのため一般的には、業務システムを運用する場合でも、やむなく各拠点でシステムを運用し、後から手間をかけてデータを統合していた。

 それが今や、各拠点で月額3-5万円程度のADSLサービス(固定IPアドレス付き)に加入、互いに接続し合えば、東京・大阪の間が構内LANと同じ環境になる。インターネットを専用線のように使えるのだ。業務システムを一元化したり、テレビ会議システムを導入したりできる。

 昨年から今年にかけ、個人向けADSLサービスは急激に伸びているが、その背後でジワジワと法人向けの固定IPアドレス付きサービスの加入数が増えている。

 あるヤフーBB!関係者は、「夏以降、中小企業からの引き合いが急激に伸びている」と話す。中小企業の通信環境が静かに変わり始めているようだ。(坂口正憲)
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