視点

ユビキタス時代、夢から現実へ

2002/09/30 16:41

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

 日本の通信環境は先進諸外国に比べ劣っているとの見方があるが、果たしてそうだろうか。先日、ある有力者の方と話をしていて、日本は米国と比べても結果として良かったのではないかと改めて思った。現在、米国のインフラはけっこう大変な問題を抱えている。一方、日本は総務省(旧郵政省)をはじめとする行政やNTT、2次プロバイダなどの人たちの頑張りで、急速にブロードバンド環境が整い、料金、品質の問題も、どこにも負けないレベルにきている。実際、いまだに「日本の通信料金は高い」と唱える人は少なくなった。

 ブロードバンドを利用したいと思えば、すぐその環境が得られる時代に来ている。これは行政やキャリアが、大変苦労しながら環境を整えてきた結果であり、この点はみんなが評価しても良いのではないだろうか。通信は世界のどこよりも良い環境にある――。この前提で物事を考えれば、これから日本はどの方向に発展していくべきかを、夢物語ではなく、現実問題として非常に有利な条件で考えることができる。

 そのキーワードは「ユビキタス」だろう。ネットワークにどうインテリジェント機能をもたせるかは非常に大事なことで、ブロードバンド・常時接続時代を迎え、アクセス手段はパソコンだけでなく、情報家電などさまざまな機器が考えられる。私は、来年から本当のユビキタスが立ち上がると見るが、これに先立ち10月1-5日の5日間、千葉・幕張メッセでは「CEATEC JAPAN 2002」(主催・情報通信ネットワーク産業協会、電子情報技術産業協会、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会)が開催される。電子部品から、IT、家電、通信キャリアまで、幅広い分野の人が集まる催しだけに、今後のユビキタス時代を展望できる良い機会と期待している。

 ユビキタス時代のビジネス、生活は、アプリケーションがモノを言う。幸い、日本はアプリケーション分野に強く、世界をリードし、いろいろと提案できる立場にある。ブロードバンド時代は、IT化のメリットに合わせて今までのやり方を変えていく「ネットワークマネジメント」が重要となるが、それには先ずネットにつながっている必要がある。行政も中小企業などのIT化に費用面で渋らず、減税や公的資金の投入など、思い切った策を打ち出す良い時期ではないだろうか。
  • 1