WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第123回 IBM、Linux拡販戦略

2002/09/30 16:04

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

積極的にSMB向けへ


 IBMはLinux普及の先導役を務めているが、その焦点は専らエンタープライズであった。IBMは2002年6月までに、全世界で1000社ものエンタープライズLinuxユーザーを獲得したと説明している。しかし、経済低迷下、世界的にエンタープライズのIT投資を活性化することは難しい。そこでIBMもこれまでエンタープライズに専念していた同社Linux戦略をSMB(中小企業)にも積極的に展開する方針を公表した。

 IBM Linux/SMBソフトウェアセールス・マネジャー、クリント・ゴーディン氏は次のように語る。「IBMが設定したSMB市場へLinuxソリューションを販売したSIerには、1社当たり2500ドル(30万円)の報奨金を支払うことを含めて、SMBへのLinux拡販に注力したい」と語る。同社はSMB向けLinux上のDB2価格を大幅に値下げし、さらにSMB向けハード、ソフトを包含したLinuxソリューション・パッケージを順次発表することも公表した。これまでIBMのLinuxキャンペーンは派手に繰り広げられていたが、その目的はユーザーのLinux認知度向上に向けたものだ。

 02年9月からIBMはSMB向け具体的エンド・ツウ・エンド・ソリューションを米国で公表し始めた。これに対して、米国のSMB相手の多くのSIerも繁感な反応を示している。その1社、スマート・ソリューションズ社長、レイノルド・クース氏は、「これまでIBM Linuxキャンペーンは毎日のように目にしていた。しかし、LinuxをSMBに提案しようとしても、どんなソリューションがIBMから提供されるかがきわめて不明確で、その提案を手控えざるを得なかったのが実状であった」と語る。

 IBMゴーディン・マネジャーは、「そんなSMB相手のSIerの困惑は間もなく解消されるだろう。SMBにLinuxを普及させるにはコンセプトだけでは役立たず、具体的ハード、ミドルウェア、アプリケーションを統合したソリューションが重要であることをIBMは十分に認識したからだ。既に米SMB経営者の多くは、Linuxがeビジネスの基幹であることを十分に理解している。つまり、いよいよ安い具体的ソリューションを提案する時期が到来した」と語る。米国にはこれまでLinuxをSMBに積極販売していたSIerも存在したが、その数は限られていた。

 その1社、スカイテック・ソリューションズのマリン・オーエン副社長は、「わが社のLinuxビジネスは順調に伸びている。02年は6月までの半年で、01年の全Linuxビジネス売上高の1.5倍に達した。これまでSMB向けLinux専門SIerが少なかったため、競合も少なく楽に商売を展開できた」と語る。さらに同氏は、次のような心情も打ち明けた。「しかし、IBMがSMB向けLinuxパッケージを発売したことで、Linux SIerが急速に増え、市場は拡大しても競合も激しくなる。Linuxで先行するわが社はIBMのSMB向けLinux戦略は歓迎したくない」(中野英嗣●文)
  • 1