開眼できるか! 中小IT化ビジネス

<開眼できるか! 中小IT化ビジネス>5.英国製IT導入手法

2002/09/30 16:04

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

 前号ではITコーディネータを取り上げたが、中小企業のIT化を進めていくには“コンサルタント”の役割が重要になる。10月から大型トレーラーによる全国キャラバンを開始するマイクロソフトも、「製品ではなくコンサルティングを全面に出したアプローチに切り替える」(同社関係者)方針である。

 大企業へは、経営課題を明確にするコンサル手法を強化するITベンダーも、こと中小企業となると「とりあえず製品を買ってくれ」とばかりに、機能の簡略化、低価格ばかりに力を入れる。ところが中小とて企業である。課題と改善策(IT化)の関係が明確にならなければ、投資意欲は顕在化してこない。

 そこで注目されるのが「e-BAT」と呼ばれる手法だ。英国でIT化が立ち遅れる中小の底上げを狙い開発された手法で、経営診断からIT化に結び付ける分析・計画ツールと言える。

 何が特徴かと言えば、聞き出した経営層の曖昧な意思や要望に重みをつけたり、関連づけたりし、必要となる改善策を導き出す。そのプロセスは標準化されており、3日間程度のコンサル作業で報告書をまとめる。

 自ら中小の金属卸企業を経営し、ITコンサル業を手掛ける田幡一郎氏は、「e-BATは気軽さもあり、経営者に明確な現状分析を求めず、中小に向いている」と評価する。

 従来型コンサルが中小へ浸透しなかった理由の1つは、「経営者との間に共通語をもっていなかったから」とも指摘される。“高等”言語を駆使し、何百万円もの費用を請求するコンサルタントが多かったのだ。

 一方で、e-BATは「中小のレベルに降りていく手法」(田幡氏)である。その認定資格者のことを、コンサルタントではなくファシリテータ(世話役)と呼ぶのも、その精神のあらわれのようだ。

 国内では、その認定・啓蒙活動をERP研究推進フォーラムが手掛ける。つまり経済産業省が後押しする。一定の研修を受け、2年間で5万円というライセンス料を支払うと、ファシリテータとして認定される。現在、国内にはまだ50人強の資格者しかいないが、中小企業の周りにたくさんの“世話役”をつくることこそが、IT化推進になる。(坂口正憲)
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