WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第121回 サンのLinux戦略

2002/09/16 16:04

週刊BCN 2002年09月16日vol.957掲載

 サン・マイクロシステムズは、02年8月サンフランシスコで開催されたLinux World直前に、インテルベースのLinuxサーバー「LX50」を発売し、下位サーバー市場で急速に普及するLinux市場へ本格的に参入した。サンはLinuxサーバー発売と同時に、全世界で1900社のSMB(中小企業)向けSIerとLX50販売契約を行ったと発表した。

Linuxパソコン発売を予告

 GIGAインフォメーション・グループによると、米国におけるLinuxのエンタープライズへの普及は、次のように大きな潮流となっている。(1)02年全米企業IT予算の9%はLinuxへの投資、(2)02年6月時点で世界のIBMメインフレームMIPS値20%はLinuxで稼働、(3)03年末には米UNIXサーバーとLinuxサーバー市場規模は逆転する。サンはLX50にはSIerが必要なソフト全てをハンドルして、SIerはLinuxサーバーをブラックボックスとして利用できるようにしたことが最大の特徴だと説明した。

 LX50発売と同時に全米で広告展開するサンの謳い文句も、「Linuxサーバーは、これまでハードを調達してからOSやApacheなどをダウンロードしてそれらの整合性をチェックする必要があった。一方、LXはすべてがバンドルされているので直ちにユーザーに納入できる」というものだ。サンはこれまでLinux陣営と距離を保ってきたが、LX50投入を契機に一挙にLinux世界におけるサンのプレゼンスを強化する姿勢を露わにした。サンのスコット・マクネリー会長はLinux Worldの基調講演で、同社はLinuxベースでウィンドウズが寡占するパソコン市場へサンブランドのパソコンを02年秋に発表することを明らかにして、業界に衝撃を与えた。

 世界最大の量販店ウォルマートは全米1500店舗で、仏マンドレーク製デスクトップLinux「Lindows」を搭載したパソコンを299ドル(3万5000円)で発売し大ヒットした。このLinuxパソコンはコンシューマだけでなく、将来的にウィンドウズライセンス料が企業ITのTCO(所有総コスト)を上昇させると懸念する大企業IT部門が大量購入を始め、品不足が続いている。そしてウォルマートよりもはるかに大企業IT部門に強いサンがLinuxクライアントを投入すると、サーバーだけでなく、デスクトップにもLinux時代が到来することを予見する米アナリストも多い。

 また縮小する世界パソコン市場で1社だけ出荷台数を伸ばし独り勝ちするデルも、レッドハットとのLinux全面提携をしたこともあって、Linuxパソコンを発売することを予測する米調査会社もある。サンのマクネリー会長は次のように語る。「ユーザーは期待をもってサンのLinuxデスクトップ発表を待っていてほしい。サンはオープンソースコミュニティと協力して、米司法界がどうしても崩せなかったマイクロソフト独占体制に大きな風穴を開け、ユーザーのデスクトップTCOを極度に低下させる」(中野英嗣●文)
  • 1