視点
長期増分費用算定方式
2002/09/02 16:41
週刊BCN 2002年09月02日vol.955掲載
まず、通信量が携帯電話に奪われ、劇的に減り始めたことだ。理論原価を積み上げ、最後に1通話当たりの料金を計算する長期増分方式だと、通信量が減ると、コストは逆に上昇する。モデルを手直ししない限り、接続料値上げになりかねない。次の要因は、DSLなどのインターネット常時接続が急増していることだ。それまでダイヤルアップやISDNで接続していた人たちがどんどん常時接続に切り替えているから、電話網の通話量はやはり減る。インターネット通信方式を採用したいわゆるIP電話が今後普及すると、通信量はさらに激減すると予想される。
このため、NTTは地域電話網への投資を手控え、IP投資に重点を置く方針を表明している。電話網への投資が手控えられれば、減価償却費が減る。実際のコストも下がる。電話網の現有設備の償却が終われば、地域通信に定額制が導入されてもおかしくない。長期増分コスト算定方式は、最新の設備を継続的に投資することが前提になっているから、理論値が実際のコストより高くなることは確実だ。
以上のような理由から長期増分方式はわが国ではその存在理由が失なわれている。にもかかわらず米国は10月の日米電気通信交渉で再び接続料の引き下げを要求してくるようだ。接続料が下がっても米国にどういう具体的利益があるのかさえ疑問だったが、長期増分方式での値下げ要求はもはや根拠がない。時代遅れの接続料値切り交渉をするより、そろそろ何が日米の電気通信にとって重要なのか、本題に立ち戻った交渉をする時期に来ている。それが通信不況に悩む日米両国の利益につながるはずだ。
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