視点

システム情報の公開を

2002/08/26 16:41

週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載

 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が8月5日、ついに稼働した。住基ネットは、雇用保険の給付、共済年金の支給など93事務に利用されることになっているほか、さらに264事務へ利用を拡大する改正案が閣議決定されており、行政事務の合理化に寄与することが期待されている。しかし、公約の個人情報保護法が整備されていないことや、個人情報漏洩の懸念から住基ネットの稼働を延期する声も少なくない。横浜市、東京都杉並区、国分寺市などいくつかの自治体が不参加を表明しているほか、個人情報の漏洩などが起きればすぐにネットワークを遮断すると表明している自治体もある。

 住基ネットについては、新聞やテレビなどのマスコミからネット上の掲示板まで様々な意見が飛び交っている。なかでも国民総背番号制につながるという反対論が多い。住民票コードという11桁の番号で管理されることの嫌悪感も理解できるが、名前や住所、生年月日もコンピュータ上では桁数は多いが一連の数字として扱われており、住民票コードと基本的には変わらない。つまり番号を振られることより、コンピュータで情報を管理されることを懸念すべきなのである。あらゆる情報がデジタル化されコンピュータによって処理される時代において、もし個人を識別されたくないなら名前も捨てる必要がある。

 残る大きな問題は住基ネットの安全性である。しかし、不思議なことに、住基ネットの構造や仕様、セキュリティ対策措置、運用ルールや管理体制の詳細に関する情報がほとんどないまま安全かどうかの議論が行われている。とくにシステムの設計情報はほとんど入手できない。総務大臣が「指定情報処理機関」に指定した財団法人地方自治情報センターのウェブサイトで、入手できるのはシステムの概要にすぎない。これでは「由らしむべし知らしむべからず」だと非難されても仕方ない。ブラックボックスのシステムほど危険なものはない。某大手ソフトウェア会社のOSのようなもので、いつどこにセキュリティ上の欠陥が発見されるかわからないからだ。運用管理の問題は残るにしろ、システム自体は安全だというのなら、システムに関する詳細情報を公開すべきではないだろうか。
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