変わるかシステム入札
<変わるかシステム入札 第二章>大手ITベンダーの1Q決算
2002/08/26 16:18
週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載
官公庁需要が好調
「日本の大手ITベンダーの決算が悪化した時期に、政府がe-Japan構想を掲げ、情報システムへの投資額を増大した。大手ITベンダーの売り上げ増加額と、政府の情報投資額を比較すると重なるんではないかと思うんだが」――。この連載の取材を進めるなかで、ある人がこんなコメントを口にした。
「各社の売り上げ増加分と政府の情報投資額を比較すると、結構近い数字になっているんだ」という指摘には真実味がある。
経済産業省の調べによれば、政府調達の受託はNTTグループ、日立製作所、富士通、NECのトップ4グループが6割強を占める。
このトップ4グループの売り上げの伸びと、政府の情報システムへの投資額を比較すると、確かに前記の発言のように似たようなカーブを描く可能性は十分にある。
しかし、大手ベンダーへの偏重が安値入札を代表とする数々の問題点を生んできたことは言うまでもない。
官公庁の売り上げ比率が最も多いNTTグループについては、02年度第1四半期の経営情報のなかで、情報システムに関する動向は発表になっていない。そのため、現状ではその動向は不明であるものの、日立、NEC、富士通の3社の官公庁需要はいずれも良好のようだ。
富士通の02年度第1四半期の決算は減収となり、通期見通しを下方修正する厳しい結果となったものの、ソフトウェア/サービス事業の売上高は前年同期比1.6%増の3809億円となった。その要因は、「官公庁がe-Japanの影響で堅調だった」(富士通・高谷卓副社長)ためである。
日立の02年度第1四半期は、減収増益決算と順調に業績を回復し、情報通信システム部門も、前年同期比6%増の4043億円の売り上げとなった。ソリューション事業が、「金融分野向けは減少したものの、電子政府関連を中心とする公共分野向けが伸張した」(日立製作所・コーポレート・コミュニケーション部)ためである。
大手ITベンダーの官公庁売り上げが好調なのは、e-Japanにより投資額そのものが増大していることもひとつの原因だが、果たして中小のITベンダーもこのように官公庁売り上げを伸ばすことができるのだろうか。その動向が気にかかる。(三浦優子)
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