視点

産業強化と国家競争

2002/08/12 16:41

週刊BCN 2002年08月12日vol.953掲載

 7月23日、都内のホテルにて、第2回日台電子商取引推進委員会共同会議が開催された。日本と台湾の貿易取引は双方にとって大きな関心事であるが、電子商取引は更に興味ある問題である。実は日本と台湾の情報化のレベルは同水準にあるからである。インターネットの普及率は日本が44%、台湾が51%、また携帯電話の普及率も、多少調査時期は異なるが日本が80%であるのに対し、台湾が90%強という具合である。

 第1回目の共同会議は台北を訪問し、陳水扁総統から親しくITに対する政府の期待をお聞きする機会を得た。今回は1年間の各プロジェクトの進行状況を確認し、更にこれを発展させることを合意した。Paperless Tradeは、今アジア各国が熱心に取り組んでいる問題であるが、昨年、日本側のTEDI CLUBと台湾側TRADE-VANはその接続実験に成功した。日本PKIフォーラムの活動も盛んである。アジアPKIフォーラムを設立し、台湾側とは今年末より実証実験を予定している。

 国際的消費者信頼を得るためのグローバル・トラストマークについても日本側はECOM(電子商取引推進協議会)の努力によりGlobal Trustmark Allianceを東京会議で合意した。このような電子商取引をめぐる国際活動で、日本の官民が頭角を現しつつあることは嬉しい限りである。

 ところで、今会議で大きく驚き、かつ反省させられたことがある。双方政府からe-Gover nmentについての披露があった。e-Taiwanの目玉はGPKIを使って5500余りある政府機関のネットの入口をシングルポータルにするという計画である。各機関のネットワークはすべてこのポータルにリンクされ、住民側からのアクセスはすべてこのポータルから行なわれるという。

 2008年完成予定という野心的なものであるが、これは容易なことではないと思う。一回の認証ですべての政府からのサービスを住民が受けられるというが本当にそんなことが実現できるのか、セキュリティは上手くいくのか、等々心配事は多くある。しかし、驚きはe-Taiwanの目的であり、曰く「強化産業、国家競争」という。目的が実に明確である。大きな政治問題を抱え、産業の空洞化に悩まされている官民には切実感がある。

 当日、出席していた知人の官僚も「スゲー」とつぶやいた。
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