サイバーテロへの備え

<サイバーテロへの備え>第6回 情報リテラシー

2002/08/05 16:18

週刊BCN 2002年08月05日vol.952掲載

 コンピュータ・リテラシーという言葉があります。リテラシーというのは、なかなか日本語にしにくい単語ですが、「読み書き能力、活用能力」といった意味を持っています。簡単に言えば、コンピュータを利用する事務処理能力といった意味になるでしょうか。ただ、最近では、コンピュータについてはすでに利用できて当然であり、これらコンピュータ、つまりパソコンを利用して、いったい何を行うのかというソフト面でのリテラシー(活用能力)が重要になってきていると考えられます。そのうちの1つとして、「情報リテラシー」という言葉を挙げたいと思います。

 前回、ハイテク犯罪、ネットワーク利用犯罪についていくつか紹介しました。これら犯罪に対し情報リテラシーは、特にネットワーク利用犯罪を防ぐために必要な、個人個人が身に付けておくべき能力であると考えています。インターネットの登場で、人間はこれまでにない情報の洪水にさらされるようになりました。これまでは触れることができなかった大量の情報を、デスク上で見ることが可能になったわけです。ただ、インターネットは、その成立時から「自己責任」の原則が徹底していた世界です。情報を集めることも自由なら、情報を発信することも自由です。多種多様なウェブサイトや、日々送られてくる各種の宣伝メール、迷惑メールなど、世界中の人に容易かつ廉価に発信できることはお分かりいただけると思います。

 それらの多くの情報を得て、取捨選択し、真に自分に必要な情報を活用する能力、あるいは、必要に応じて情報を加工し発信する能力――これらを私は情報リテラシーと呼んでいます。例えば、インターネットオークションでの詐欺事件があります。これらのオークションでは、自らの個人情報を偽って出品することが以前は可能でした。そのようなオークション情報から、信頼できる情報を見抜く手段を身に付け、詐欺的な出品には応札しない、これも情報リテラシーでしょう。インターネット上の情報は無保証のものがほとんどです。しかし、玉石混淆の中から、真に価値あるものを見つけ出す、それが情報リテラシーであると考えています。ハード面での対策はもちろん重要ですが、それ以上にこの種の情報の取り扱いに関する自分自身のセキュリティを高めていくことが重要です。(警察庁情報通信局技術対策課 課長補佐 野本靖之)
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