WORLD TREND WATCH
<WORLD TREND WATCH>第116回 遂に始まったIBM従量制料金
2002/08/05 16:04
週刊BCN 2002年08月05日vol.952掲載
ユーティリティコンピューティング
米国では企業ITコスト削減の究極のソリューションとして、このユーティリティコンピューティングは期待され、03-04年から多数の企業がこれを利用し始めたいと考えている。IBMの当サービスの第1号ユーザーはクレジットカード大手アメックスだ。アメックスはIBMと7年間40億ドル(4800億円)の基本契約を結んでいる。米国では全社のユーティリティ方式移行の前に、企業内IT部門と社内ビジネス部門間のIT配布コストを、ユーティリティ方式で算出することが始まっている。そのためのITインフラ使用量算出用ソフトも数多く販売されている。社内コストを従量制にすることで、各ビジネス部門もITコスト削減を真剣に考えるようになり、全社コスト削減につながるからだ。新規に購入するストレージやプリンタもネット接続機能が強力で、ユーティリティ方式へ全社が移行しても、これらが転用できるような配慮も金融や航空会社は始めた。IBM第1弾サービスは同社のLinux戦略の一環でもある。IBMはLinuxメインフレームをユーティリティセンターに設置し、1台のメインフレームを数千の独立パーティションに分割する。1パーティションを「1サービスユニット」として、米国では月額300ドルだ。
Linuxアプリケーションユーザーは、IBMからユニット単位でメインフレームを借り受け、その処理はIBM設置のメインフレームが行う。IBMの説明では数ユニットでIBM iSeries(旧AS/400)1台分の処理性能となる。3ユニット借りれば月額900ドル(10万8000円)、5ユニットであれば1500ドル(18万円)が請求される。もちろん月毎、日毎にユニット数は変更できる。IBMはこれで自社導入より初期初資、保守料を含めたTCO(所有総コスト)の25-60%が削減できると説明する。
IBMはユーティリティ方式をメインフレームからストレージ、ネットワークにまで順次拡大する。即ちすべてのITインフラが従量制料金で使えるようになる。IBMはゼロダウンというメインフレーム購入を計画するユーザーに対応するため第1弾サービスを開始したと、当ビジネス担当D.マークハージ副社長は語り、次のように補足した。「メインフレーム購入ユーザーが増えることは大歓迎だが、IBMはこれを売るよりも次世代サービス普及促進を優先したい。メインフレームを新規購入するには担当者の教育にも金がかかる。しかしユーティリティ方式ではその負担もなくなる。このことを実感してもらう方が重要だ」(中野英嗣●文)
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