e-Japan最前線

<e-Japan最前線>5.電子入札システムで連携

2002/07/29 16:18

週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載

 下関市(山口県)は、昨年10月から独自の電子入札システムを稼動し実績をあげている横須賀市(神奈川県)と提携、今月から横須賀方式の電子入札システムを導入することを決めた。地方自治体にとって、電子入札システムの最有力候補といえば、国土交通省が推進するCALS/EC(公共事業支援統合情報システム)のはず。なぜ、下関市は横須賀方式を選択したのか。その決め手は公共事業の入札制度改革だった。「いまや国はもちろん、地方でも公共事業の入札制度改革は大きな課題だ。下関市でも入札制度改革が活発に議論され、昨年秋ごろに横須賀市で実績をあげている条件付一般競争入札制度を導入する方針が固まった」(下関市総合政策部情報政策課・肥塚敬文課長補佐)。

下関市、横須賀方式を導入

 条件付一般競争入札は、入札参加資格を満たす業者全てに参加を認めて競争入札を行う方式。10社前後の業者を指名して行う指名競争入札に比べて参加業者も大幅に増えるため競争原理が働きやすく、横須賀市では工事費の大幅な削減を実現している。「条件付き一般競争入札では入札参加業者も増えるため、入札事務を効率化する電子入札の導入は不可欠。国土交通省のCALS/ECも検討したが、条件付一般競争入札をサポートできるかどうかが不明だった。一刻も早く制度改革を実施するためにも実績にある横須賀方式を選択した」

 国土交通省でもCALS/ECの価格などの大幅な見直しを実施したが、電子入札コアシステムや電子認証サービスなどの提供開始は今年度下期から。制度改革を急ぐ下関市にとって選択肢は横須賀方式しかなかったとも言える。横須賀方式が魅力的なのは、導入費用の安さだ。横須賀市がNTTコミュニケーションズと共同開発した当初の費用は1億2000万円。内訳は、電子入札システム本体6000万円、電子認証・電子公証システム6000万円だった。しかし、電子入札システム本体は、NTTコミュニケーションズが低価格のパッケージ商品を開発済みだ。

 下関市では、電子入札システム本体を約400万円で独自に購入。電子認証・電子公証システムはネットワークを通じて横須賀市のシステムを共用する、いわゆるASPサービスを利用することにした。このASPサービス料(共用分担金)は今年度分で130万円(電子認証フロッピーディスク=FD発行枚数200件以内、電子入札件数50件以内)。導入費用に運営管理費を含めても格安である。電子認証・電子公証システムは横須賀方式の鍵を握るシステムでもある。国土交通省方式のように、電子認証ICカードを1枚4万5000円(有効期限1年半)で購入し、電子入札用パソコンもICカードリーダーを含めて専用システム化が推奨されている状況では、零細業者などに対して「紙による入札の併用を認めざるを得ない」(横須賀市財務部契約課・佐藤清彦主幹)。

 そこで横須賀市では電子認証FDを無料で配布し、電子入札も手持ちのパソコンでできるようなシステムとすることで、紙による入札を排除。効率的な電子入札を実現したわけだ。「横須賀市の電子認証・電子公証システムは10市町村ぐらいで共用できる能力があり、下関市以外にも2-3の団体で利用することがほぼ決まっている」(佐藤主幹)という。CALS/ECの地方展開を目論む国土交通省にとって横須賀方式は確かに目の上のコブ。しかし、横須賀方式がなければ、今年に入って実施されたCALS/ECの導入コスト引き下げや利用環境の見直しが行われたかどうか。やはり競争原理は不可欠である。(ジャーナリスト 千葉利宏)

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