人材流動化の時代
<人材流動化の時代>第5回 欠ける人材育成環境
2002/07/29 16:04
週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載
国の政策は?
本は人材育成にあまりお金を使っていないという批判がある。転職するしないは、基本的には個人の自由だが、会社の倒産やリストラなどの外的要因でやむなく転職せざるを得ないときもある。その際の救済手段が日本は遅れているというのである。例えば、IBMやモトローラは自前で大学をもち、希望者には再訓練を施しているという。リストラするにしても、再教育して質を高めてから、首にしているそうだ。
人材育成という視点で少し考えてみよう。まず、国家である。e-Japan戦略本部は、IT人材大国になるという命題の元、(1)学校教育の情報化、(2)国民のITリテラシー向上、(3)IT分野の職業能力開発および専門家の育成・活用――という3大目標を打ちだしている。
学校教育のIT化では、子供の時からITを活用できる能力を身につけさせることを目標に、普通教室へのパソコン導入、インターネット接続環境の整備などに取り組んでいる。
国民のITリテラシー向上では、日常生活にITを活用することを目標に、01年度にIT基礎技能講習として550万人に教育を実施した。
IT職業能力開発専門家の育成では、雇用のミスマッチを解消し労働生産性を高めること、世界最先端レベルのIT知識水準をもった人材を育成することを大きな目標にしている。
具体的には、IT関連の修士、博士号取得者を増加させ、国・大学・民間における高度なIT技術者・研究者を確保、あわせて、05年までに3万人程度の優秀な外国人人材を受け入れ、米国水準を上回る高度なIT技術者・研究者を確保する――という目標を掲げる。
目標としては妥当で、ぜひ実現しなければならないテーマだが、ちょっと振り返ってみると、例えば学校教育の場合、視聴覚教室から始まり、LAN導入100校プロジェクトなど、これまでに相当の資金を注ぎ込んできたはずである。
その成功と失敗を踏まえて、今回のプロジェクトが推進されているのか、いささか心許ない。パソコン教室の場合、これまでに指摘されている問題では、放課後は教室を閉め切ってしまうので、子供たちが自由にパソコンに触れる環境にはならなかったなどの問題がある。(石井成樹)
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