人材流動化の時代

<人材流動化の時代>第4回 IT化の被害者・中間管理職

2002/07/22 16:04

週刊BCN 2002年07月22日vol.950掲載

 ある外資系企業の社員と話をしていたとき、「辞め時を誤った」というグチが出た。何でと聞いたら、ストックオプションが少なかったのだという。1年前なら、売れば何千万円になったのに、株価が下がってしまったため、ひどく割を食ったのだという。

 ストックオプションの仕組みは良くはわからないが、基本的には、会社をやめるときでないと、ストックオプションの権利は行使しにくいらしい。だから、辞め時を誤ると大変な差が出てしまうということのようだ。

 外資系企業では、自社の株価を見ながら、いつ辞めるか思案投げ首、という人たちが多いのか、とつい考えてしまった。これはこれで、大きな問題だろうから、いつかは反動が出てくるだろうなと思っていたが、アメリカでは会計制度の側面からメスが入る可能性が増しているようだ。

 それはそれとして、かなりの額の退職金が出る大企業や、ストックオプション制度のある外資系企業は恵まれている。

 ほとんどの中小零細企業では、退職金なんてたかがしれているのが現実だろう。しかも、外部環境の変化にも弱い。

 ある知人。昔は喫茶店を経営、結構な暮らしができたという。ところが近所に有名コーヒーチェーン店が出店、50歳を過ぎたところで店を畳まざるを得なくなった。「俺の天敵はあの店」だそうだが、「娘が2人。自活できる年齢だったのでまだ良かった。そうでなかったら首をくくっていたかも」と述懐する。

 多分、転職への考え方は年齢によって大きく違う。若いうちなら、よりよい生活を求めてという動機が最も大きいだろう。しかし、40を超えると働き口は極端に減る。

 実は、IT化でもっとも深刻な影響を受けているのはこうした層のようである。

 いわゆる中間管理職である。IT化、とくにメールの普及で組織はフラット化の一方である。組織をフラット化しない企業は生き残れないことも確かで、中間管理職の行き場はどんどん減っている。

 パソコンぐらいは使えるだろうが、それだけでは評価されない。中間管理職というと、情報仲介の業務が多くなるだろうが、そうした仲介業務だけしかこなせない人たちは行き場を失っていくだろう。

 では、どうしたらよいのか。(石井成樹)
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