視点
米テレコムの破綻
2002/07/08 16:41
週刊BCN 2002年07月08日vol.948掲載
01年初に起こった米通信グローバルクロッシング倒産で、米ウォールストリートは「回線交換取引という売上高と利益を大幅に水増しする粉飾会計」の実態を初めて把握した。ワールドコムもこの粉飾を長期間行っていたことが架空利益発覚で明らかになった。回線交換取引はテレコム2社間で、自社空き回線容量を相互に同額で売買する手法だ。売った代金は当期売上高に計上し、仕入れた同額の回線代金は原価ではなく設備として20年間にわたって償却する。従ってこの売買によって双方とも売上高と架空利益が一挙に膨らむ。この手法は米大手テレコム共通の悪弊だとは指摘されながら、米SEC(証券取引委員会)も実態解明をしないで放置した。
いうまでもなくネット時代の現在、通信インフラは先進国では最も重要な社会インフラだ。米国はクリントン政権時代のGII構想からインターネット普及へと進展したネット時代のバブルに踊って、米伝統企業の多くも巨額IT投資を続けたため、世界経済不況になると過剰IT設備調整のため、IT投資削減に追い込まれた。これも世界的IT不況が長引く大きな要因となっている。米新興通信の多くはドットコムを主力顧客としていたため、この崩壊によって自らも市場から退出してしまった。通信サービスはコンピュータの巨大需要先でもある。ウォールストリートは、「テレコム危機はネットバブル最後の巨大残渣で、コンピュータ市場減少も加速する」と冷たく論評する。
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