サイバーテロへの備え
<サイバーテロへの備え>第2回 ネットワーク社会の恐怖(サイバーテロって?(2))
2002/07/08 16:18
週刊BCN 2002年07月08日vol.948掲載
サブタイトルに、あえて「恐怖」という言葉を使わせてもらいました。とはいえ、「サイバーテロ」っていったいどういうものなのか、実際にどういうことが起きるのか、よくわからない方も多いと思います。結論から言えば、「私にもわかりません」。しかし、得体が知れないとはいえ、大規模な影響が出る可能性があるというのも、また事実であると考えています。
政府がまとめた「重要インフラのサイバーテロ対策に係る特別行動計画」には、「サイバーテロ等」として、「重要インフラに対し、ネットワーク等を利用した電子的な攻撃で、国民生活や社会経済活動に重大な影響を及ぼす可能性があるもの」という記述があります。要するに、コンピュータを使った破壊工作、とでも言いましょうか。
ここで言う重要インフラとは、実際の生活や経済に欠かせない一連のサービスであるとお考えください。例えば、金融機関、ライフライン、情報通信、運輸交通、といったものです。
それでは、実際に起こりうる被害としてどんなものが考えられるでしょうか。
幸いにしてわが国では、大規模にわたる被害が発生したサイバーテロ事件は起こっていないと言ってよいでしょう。しかし、海外においては、さまざまな実験が行われていますし、また、実際にサイバーテロと思われる事件が起きています。
興味深いのは、1997年に行われた米国での実験です。ハッカーに扮した米国政府職員らが、市販のパソコンやインターネットで入手できるソフトなどを用いて、重要インフラの管理システムや、国防総省のコンピュータへの侵入を試みるという実践的な実験でした。
その結果、数か月の間に、国防総省のシステムは数十回侵入され、さらに重要インフラのかなりの割合の管理システムが、停止寸前にまで追い込まれたということです。ということは、大規模な停電や断水、食料の供給不能、といった事態が起こりえたと言い換えることができるのではないでしょうか。当時と比べ、確かに防御に関する技術は向上しています。しかし、それに伴って攻撃側の技術もまた、向上していることを忘れてはなりません。
次回は、実際に被害をもたらした事例と、わが国で発生したサイバーテロに近い事例を紹介したいと思います。(警察庁情報通信局技術対策課 課長補佐 野本靖之)
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