視点

システム障害と経営責任

2002/07/01 16:41

週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載

 大規模なシステム障害を起こしたみずほフィナンシャルグループが、このほど社内処分を発表した。それによると、前田晃伸・みずほホールディングス社長、工藤正・みずほ銀行頭取、斎藤宏・みずほコーポレート銀行頭取の経営トップ3人が役員報酬の月額50%を半年間カットする。さらに、システム開発担当で旧第一勧業銀行担当常務だった竹中公一・みずほ銀行常務執行役員は6月17日付で降格のうえ辞任。3月末まで経営統合を指揮していた西村正雄、山本惠朗、杉田力之の前経営トップ3氏も、同日付でみずほフィナンシャルグループ特別顧問を辞任した。処分は全役員117人に及ぶ大規模なもので、4月の新年度入り直後から発生した未曾有の金融システム障害問題はひとまず決着をみた。

 だが、待てよ、である。システム開発担当の竹中氏の降格・辞任はともかく、前経営トップについてはトラブルに至った十分な検証もなされたと思えないまま、「本人の申し出」により辞任。また、前田氏などの現経営トップも、たとえ4月1日に就任したばかりにせよ、報酬減額で済んでよいものだろうか。最近、日本企業でもシステム部門の最高責任者としてCIO(情報統括責任者)を置くところが増え、竹中氏もその立場にあったが、果たして本来でいうCIOとして機能していたのかどうか。

 つまり、ITに絡む指導、判断で経営トップに準じた権限が与えられていたのかどうか。もし、CIOが有名無実化していたとすれば、実質的な責任の所在は経営トップにあったと言わざるを得ない。今回のシステム障害は、一般企業なら倒産に至ってもおかしくないほどのトラブルであり、経営トップの責任は重い。今後、同様の大規模障害が他の企業や行政分野で起こってしまった場合でも、今回のみずほの対応が処分の“ひな形”になってしまうなら、現場で奮闘したシステム技術者や被害者はやりきれない。これまで企業では、システム部門は他部門に比べ低い位置に見られ、経営トップも「ITのことはよく分からない」と関与を避けるケースが多かった。しかし、それは過去のこと。今日、システムを巡る判断は経営戦略上、極めて重要な事項であり、数ある経営判断の中でも、トップレベルに位置する。サイバーテロの脅威も高まるなか、経営トップはITの重要性をいま一度、認識しておく必要がある。(本紙編集長・小寺利典)
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