WORLD TREND WATCH
<WORLD TREND WATCH>第111回 米企業IT予算削減
2002/07/01 16:04
週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載
セキュリティ重視へ
しかし、IT投資ピークの00年に比べると、米企業IT投資は2ケタ減少が続く。米政府は自国IT投資減を懸念して、わが国のe-Japan計画による巨額行政電子化予算同様に、連邦政府、州政府ともにIT予算を20%増額しIT市場テコ入れを狙う。このような予算の縮小動向の続くなか、米企業投資重点分野に大きな変化が見られる。それはセキュリティへの重点投資の動きだ。IW調査によると、02年ITセキュリティ予算増額企業は56.3%、不変は28.1%に対し、減少はわずか15.6%である。同調査による米企業ITでのセキュリティリスクが増大すると考える分野は以下の通りだ。(1)ワイヤレスLAN64.5%、(2)インスタントメッセーシング61.3%、(3)ウェブサービス51.6%、(4)マイクロソフト.NET&C#は35.5%、(5)ピアtoピア19.4%、(6)第2世代ハンドヘルド12.9%。とくに02年初よりわが国同様に急速な普及が見られるワイヤレスLANでのセキュリティリスクに対する米企業の懸念は大きい。米セキュリティ管理のザ・フォリオ・グループのアナリスト、ダン・ラビン氏は「ワイヤレス通信普及とウェブアクセスツール多様化によるネットワーク侵入者とウイルス混在型リスクがきわめて高くなった。このため米企業のIT予算に占めるセキュリティ強化政策予算は急増する傾向にある。さらに米大企業はテロによるセンターの物理的破壊、生物化学兵器攻撃への対策予算も増やさなければならない。これはセキュリティや爆破対策会社の市場を急拡大させる。一方、企業はIT総額予算を絞り込む方向にあるので、新規ウェブサービスシステム構築や既存システムのアップグレード予算は大幅に減少する。「このため米企業の基盤システムが弱体化し、この防御システムばかりが高度化するという変形弊害が心配される」とラビン氏は警告した。
物理的破壊対策予算増加の恩恵にあずかる市場はiDC(インターネット・データ・センター)やSANなどに限定されるのも実態である。(中野英嗣●文)
- 1