人材流動化の時代
<人材流動化の時代>第1回 リストラだ――人が欲しい――
2002/07/01 16:04
週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載
一方、「2005年までに3万人程度の優秀な外国人人材を受け入れる」――。IT戦略本部が進めるIT人つくり計画の骨子の1つである。
人材が溢れている世界もあれば、足りない世界もある。否応なく、人材の流動化が迫られている。
終身雇用――。民間企業、とくにIT産業界にあっては、この言葉は死語になったといってよいだろう。
もっとも、それ以前から大企業以外では、終身雇用制度は崩れていた。外資系企業は言うに及ばず、中小零細企業では、少しでも条件の良い会社で働くため、あるいは生き延びるため、転職は当たり前のようになっていた。
大企業の場合は、その雇用条件があまりにも良すぎるため、よほど意欲のある人間でない限り、「動けば損する」という打算を優先させた結果が、会社を辞めない理由になっていたようにも見受けられる。
5年ほど前に、ある大手企業の子会社を辞めて独立したA氏。
「50歳目前だった。辞める気になった最大の理由は、割増退職金の魅力だったな」
「50にもなれば、会社にどのくらいの将来性があるが、自分がどの辺の役職まで行けるか、およその見当はつく。年金も減らざるを得ないだろうし、この辺が見切り時かなと…」
割増退職金は約3000万円になったそうだ。「もちろん不安はあったが、これだけあれば数年は食えるし、ある程度、準備期間をおいて独立してやろうという思いもあった」。そして2年半ほど前に独立。いまは「何とか食えるようになった」。
口八丁、手八丁の方で、度胸もある。組織の中にいるより、独立が向いていたようだ。
総じて言えば、IT業界は人材不足の産業であり、産業界全体は0.51倍の有効求人倍率なのに対し、IT産業は約2倍に達するという。(石井成樹)
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