変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札>12.政府のIT調達

2002/06/24 16:18

週刊BCN 2002年06月24日vol.946掲載

加算方式を採用

 これまでこの連載では、政府のIT調達について、さまざまな角度から問題点と改善に関する意見を掲載してきた。政府は昨年12月に「情報システムに係る政府調達府省連絡会議」を設置。総務省、経済産業省、財務省の3省は今年4月に「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」の名称で、価格が重視される傾向にある総合評価落札方式における除算方式の見直し案を出し、さらに6月中には調達側の体制強化、技術評価を行うことを目的に、基本的なガイドラインつくりを進めている。

 政府では、情報システム調達の特質として、①属人的な技能に頼った高度な労働集約的な作業が必要なために、作業計画の立案や管理が困難、②ソフトウェアは適切な価格算定がわかりにくく、的確な価格見積もりが解りにくい、③ITは技術進歩が速く、専門家以外の人間がITベンダーの事情についていけない面があり、技術に対する的確な評価、管理が困難――という3つを指摘している。

 この特質をふまえた上での課題として、次の3つの課題をあげる。

 課題1・構築される情報システムの技術力も含め、一層公正、中立に評価し、入札・契約に反映させるための工夫が必要。

 課題2・技術力ある企業には、企業規模に関わらず競争に参加させ、技術力を活用することが必要。

 課題3・これからのためにも、調達側が質の高い的確な提案依頼書(RFP)を提示し、また、その後の調達管理を的確に行っていくことが必要。

 経済産業省では、「日本のIT調達における先進的なモデルケースを政府自身が示せるような調達制度への転換をはかっていく」としているが、はたして本当にその目標通りに物事が進んでいくのか、今後の成り行きを注意深く見守る必要があるといえるだろう。

 例えば、政府のIT調達のなかで、「安値入札を生み、大手ITベンダーばかりが落札する原因」として、「総合評価落札方式」に問題があると多くの人が指摘していた。

 「大手ベンダー間では、技術面での差は見極めにくい。そうなると、技術、能力、価格の3点で総合評価を行うといっても、価格面での差異に重点が置かれがちになる」(ヤス・クリエイト・安延申社長)

 この点について政府では、従来の除算方式から加算方式による評価を行うことを決定。4月22日の情報システムに係る政府調達府省連絡会議で了承を得ている。

 従来の除算方式は、技術点を入札価格から引き算して得た評価値のうち、最高評価点となったものが落札する方式であった。しかし、加算方式では、入札価格から価格点を算出し、技術点と価格点を合算して得た評価値が最高となったものが落札する仕組みとなる。

 つまり、不当に安値をつけた場合、評価値が高まらなくなるのが加算方式であり、不当な安値がつけにくくなるというものだ。確かにこの制度が導入されれば、大幅な安値入札を行う企業への歯止めのひとつとなるだろう。これまで大きな問題とされてきた安値入札防止に向けて、今までにない前進であるといえる。

 しかし、安値入札がなくなるだけで、政府のIT調達における問題点がなくなったわけではない。

 情報システム以外の政府調達について、新聞、雑誌でさまざまな問題や事例が紹介されていることはあらためて指摘するまでもない。それに比べると情報システムに関しては、「マスコミで取りざたされる建設などの問題以下のレベルで解決していかなければならないことが多い」とIT業界の識者は指摘する。

 まず、変化が起こりつつある現状がどれだけ変わっていくのか、日本という国の情報システムに関する民度が今、試されている。(三浦優子)
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