視点

“ビッグイヤー”と“ビッグアイ”

2002/06/17 16:41

週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載

 2002年4月4日付の日経新聞は、「日本を見下ろす極秘衛星か」という見出しで、日本のNPOが従来どこにもその記録がなかった電子偵察衛星を発見、これは世界的通信傍受計画「エシュロン」の一部ではないかと報道した。「エシュロン」はフランス語で梯子、軍用語で梯団を意味する。そもそもはUKUSA(UK+USA)同盟と呼ばれる米、英、加、豪およびニュージーランドのアングロサクソン系5か国のCOMIT(Comm unication Intelligence)やSIGINT(Signal Intelligence)という通信秘密傍受システムに端を発するものである。エシュロンは1日30億通の通信を傍受し、あらかじめ“Dictionary”に登録されたキーワードを含む通信を1分間に200-300万件のスピードで収集、うち100万件を解読分析する能力があると言われている。インターネット通信の90%を傍受していることから、別名「無限の空気清浄器」とも呼ばれている。その中心は米国のNSA(国家安全保障局)で、別名No Such Age ncy(そんな機関は存在しない)と言われるくらい長い間、秘密のベールに包まれてきた。

 ところが、99年欧州EU議会の公式報告書が出されるに至って初めて公の議論の対象になった。冷戦終結後は本来の国防目的に加えて、テロ対策、麻薬や武器の取引防止、不正な商取引防止などに必要なシステムとして存在が正当化されている。その限りでは、この種のシステムは一種の必要悪として認めざるを得ないという考え方もある。正当な守秘目的のために送られる通信を守るためには、AES(Advanced Encryption Standard)のような国際標準化された暗号方式だけでなく、場合によっては独自の暗号方式を組み合わせた自衛策を講ずる必要も起きてこよう。問題は、それが個人のプライバシー領域にまで踏み込んできた時である。ラルフ・ネーダーは、かつて「コンピュータをBig Ears(ビッグイヤー)、Big Eyes(ビッグアイ)として、今やコンピュータはあなたの義母よりもあなたのことを知っている」と警告した。われわれは、ここで「コンピュータ自身にはモラルはない。それを正しく使うか誤って使うかはすべて人間の問題だ」といったワトソン元IBM会長の言葉を今、再び噛み締めてみる必要があるのではないか。

 2002年4月4日付の日経新聞は、「日本を見下ろす極秘衛星か」という見出しで、日本のNPOが従来どこにもその記録がなかった電子偵察衛星を発見、これは世界的通信傍受計画「エシュロン」の一部ではないかと報道した。「エシュロン」はフランス語で梯子、軍用語で梯団を意味する。そもそもはUKUSA(UK+USA)同盟と呼ばれる米、英、加、豪およびニュージーランドのアングロサクソン系5か国のCOMIT(Comm unication Intelligence)やSIGINT(Signal Intelligence)という通信秘密傍受システムに端を発するものである。エシュロンは1日30億通の通信を傍受し、あらかじめ“Dictionary”に登録されたキーワードを含む通信を1分間に200-300万件のスピードで収集、うち100万件を解読分析する能力があると言われている。インターネット通信の90%を傍受していることから、別名「無限の空気清浄器」とも呼ばれている。その中心は米国のNSA(国家安全保障局)で、別名No Such Age ncy(そんな機関は存在しない)と言われるくらい長い間、秘密のベールに包まれてきた。ところが、99年欧州EU議会の公式報告書が出されるに至って初めて公の議論の対象になった。

 冷戦終結後は本来の国防目的に加えて、テロ対策、麻薬や武器の取引防止、不正な商取引防止などに必要なシステムとして存在が正当化されている。その限りでは、この種のシステムは一種の必要悪として認めざるを得ないという考え方もある。正当な守秘目的のために送られる通信を守るためには、AES(Advanced Encryption Standard)のような国際標準化された暗号方式だけでなく、場合によっては独自の暗号方式を組み合わせた自衛策を講ずる必要も起きてこよう。問題は、それが個人のプライバシー領域にまで踏み込んできた時である。ラルフ・ネーダーは、かつて「コンピュータをBig Ears(ビッグイヤー)、Big Eyes(ビッグアイ)として、今やコンピュータはあなたの義母よりもあなたのことを知っている」と警告した。われわれは、ここで「コンピュータ自身にはモラルはない。それを正しく使うか誤って使うかはすべて人間の問題だ」といったワトソン元IBM会長の言葉を今、再び噛み締めてみる必要があるのではないか。
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