大航海時代
<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第37話 改革すべきところとは
2002/06/17 16:18
週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載
大阪電気通信大学 副理事長 水野博之
変化するためには過去を忘れないといけない。さらに言えば、過去を否定しないといけない。変化することのほとんどない老人が、昔話ばかりしているのは、変化できないから過去の思い出に帰っていくのだ。成功した人ほどこの傾向が強い。国も同じことである。過去の成功体験があまりに大きかったために、そのシステムを忘れかけているのが現在の日本である。個々の人間は一生懸命に働いているのだが、その仕組みがもう世の中に合わなくなっているから効果が上がらないのだ。
それはちょうど、時の流れを逆に回そうとするようなものだが、そこのところがわからない。当然のことながら、その中に組み込まれた歯車にはなおさら、わかりようがないのだが、時としてそれが機能しなくなると、世の中大騒ぎで、引きずり出して糾弾する。一罰百戒の見せしめとされる。
最近の中国での亡命問題でもそうだ。確かに領事館の人たちにはもう少し毅然として欲しいが、もし自分があの立場になったらどうするか、というと、大変心許ない。現実の危機などに会ったことのない人間が、あのような必死の逃亡を計っている人たちの気持ちになれと言っても、それは大変なことだ。過去半世紀、いわば「平和ボケ」だった日本自身があの映像では断罪されているのである。
とても他人事とは思えない、あの映像が流れるたびに、あの少女の呆然たる姿に、私は胸の痛む想いがした。それは少女のおかれている状況への同情と、自らがなんと、現実から遠いところにいるか、という自責の念からであった。
あのような自らの生存をかけた戦いの場に会えば「逃げろ」としか言えないのが日本の現実であろう。国自身が毅然としていないのだ。末端が毅然たりようがないのである。改革すべきはこの国のあり方なのだ。(熊本県・黒川にて)
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