進化するECビジネス
<進化するECビジネス>アドパーク 不動産業界の日本最大級検索サイト
2002/06/17 20:43
週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載
サイト立ち上げは96年65万件の情報量を誇る
アドパークの設立は96年9月。同社の平田実社長がソフトウェア開発を手がける千代田経営管理システムで不動産会社のシステム開発を担当したことがきっかけだ。平田社長は、「不動産情報をインターネットで提供する仕組みがつくりやすかったことから検索サイトを開始するにいたった」と当時を振り返る。同社が提供する不動産業界の物件検索サイト「アドパークスタイル」のサービスは、不動産会社向けのインターネット広告サービス。特徴は、プロバイダや検索サイト、携帯電話公式サイトを運営する大手企業30社と提携していることだ。提携各社のサイトで提供する「不動産」や「住まい」などのカテゴリーから消費者ユーザーを取り込む点。そのため、アクセス数は02年5月時点で月間2677万ページビューに達しており、ヒット数が高いサイトとして注目を集める。サイトでは、会員登録した不動産会社が提供する賃貸物件(マンション、アパート、テナント、駐車場など)や売買情報(一戸建て、マンション、土地、競売物件など)を掲載。サイト内では、消費者ユーザーが検索しやすいよう、物件を地域や種別などで分けている。
特集では、「おすすめ新築マンション情報」や「ペットと暮らす賃貸物件検索」、「ひとり暮らし応援特集」、「ウェディング特集」などを設け、消費者の環境に適した物件を掲載。ほかには、住宅関連のニュースや暮らしに役立つ情報、家探しの基礎知識をサイトに載せることで付加価値サービスを提供している。会員企業向けには、会員登録した際、サイトへの物件情報掲載に加え、店頭用広告チラシをインターネット掲載情報から作ることが可能な「不動産チラシ作成ソフト」、「間取り図作成ソフト」、「地図作成ソフト」の3種類を提供。不動産会社がガイダンスに従いマウスで入力するだけで迅速に物件情報を発信できる環境を整えた。
利用価格は、入会金が3万円(事務手数料として別途2万円必要)、月額2万円となる。物件の掲載数は1か月間の料金で無制限だ。同サイトでは、会員数が5300事業所を獲得し、情報発信量が65万件を超えている。「会員数は日々増えている。情報発信量も拡大している」と、不動産業界における国内最大級のサイトに成長した。
不動産会社のIT化に注力EC実現が業界の課題
平田社長は、「サイトでECビジネスを行うためには、まずコミュニケーションがとれる環境が整っていなければ成立しない」と強調する。不動産業界では、宅建取引法のなかに、不動産業者は重要な事項を相対して説明しなければならないという規定がある。「住宅を購入する・借りるなどの際には、不動産会社からフェイス・トゥ・フェイスで説明を聞き、署名捺印しなければならない。これは、ネットでの取り引きが基本的に禁止されていることと同様だ」と指摘する。現段階では、ITを活用することで効率性が高いコミュニケーションや情報メディア、情報サービスとして不動産流通が大きく変化しつつあるものの、ECを実現するeマーケットプレイスを立ち上げたところでビジネスにならないとみている。また、「デジタル情報が効率よく消費者や業者間で流通するようになったとしても、不動産会社自身のサービスの本質は変わらない」として、不動産ビジネスでの効率化とサービス向上を支援していく。その1つとして、不動産会社向けにパソコン教室などを開催している。具体的には、パソコンの操作から、最適な物件図面のつくり方、インターネットを活用したビジネスの効果などを指導する。こうした取り組みで、「不動産会社がITリテラシーを上げていく。ITを積極的に活用することで、例えば、消費者が高額な物件の価値を分かりやすく理解するような情報を提供するなどの点を訴求していく」という。
当面はサイトの会員数を増やしていくことに注力。検索サイトの窓口を増やし、コンテンツの充実を図る。付加価値サービスとしては、CRMサービスを月額5万円で提供し、会員の業務改善を積極的に行っていく。「来年の前半には、約1万社の会員を目指す」と意気込む。同社では、これまで行ってきた雑誌の取次ぎ業務を昨年8月で撤廃し、サイトビジネス1本に絞った。平田社長は、「サイトビジネスを本格的に展開するため」と、利益率の引き上げに闘志を燃やす。01年度(01年12月期)は、売上高が9億5000万円、経常損益が7000万円の黒字。今年度は、売上高が12億円、経常損益が1億円の黒字を見込む。同社では、「来年度に株式上場したい」意向だ。
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