変わるかシステム入札
<変わるかシステム入札>11.アドビ システムズ
2002/06/17 20:43
週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載
電子政府に売り込み
今年5月に開催されたビジネスショーでは、各社が電子政府関連の展示を行ったが、米アドビシステムズのブルース・チゼン社長兼CEOが特別講演を行い、同社が本気で電子政府市場に取り組んでいる姿勢を強調した。政府のペーパーレス化は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを利用したペーパーレスで行える、電子政府の基盤を構築するというタイムテーブルが掲げられている。
これに対して、大手ITベンダーも積極的に取り組みを行っている。なかでもアドビシステムズは米国をはじめ、英、ドイツなどでの導入事例を参考にできることを利点に、日本市場での売り込みを図っている。
これまで印刷関連の展示会やマッキントッシュ関連の展示会でアドビシステムズの名前を見ることはあったものの、ビジネスショーで電子政府をテーマのひとつとした講演を行ったのは、同社が本気で電子政府関連に取り組んでいることを表すものだといえるだろう。
特別講演前日の記者会見で、チゼンCEOは、「政府が紙からデジタルへと移行するためのワークフローを提供することができる。デジタル化されたネットワークパブリッシングは、紙、コンピュータ、PDAなどあらゆるものでデータを見ることができなければならない。アクロバットリーダーは携帯電話に採用されているシンビアンOSへの対応を予定しているが、すでに対応しているOSだけで13種類あり、ほとんどのコンピュータに接続することが可能。情報を確実に伝えることができる手段となる」とアピールした。
続けて、「PDFはオープンスタンダードとなり、企業からも政府からも信頼性の高いフォーマットとして採用されている」とアピールする。
アドビは電子用紙ソリューションを提供するカナダのアクセリオの買収を今年4月に完了した。アドビではアクロバットソリューションとアクセリオ製品が同じ電子ペーパーのためのソリューションであっても補完関係にあり、企業、電子政府向けに販売していくのに適したものであるとしている。
実際に法務省、47都道府県がアドビPDFを採用し、岐阜県、愛媛県がアドビアクセリオソリューションをすでに採用しているとの事例も紹介した。
ところで、現在無料でユーザーに提供されているアクロバットリーダーだが、これは閲覧のためのソリューションで、電子署名などに対しては別のソリューションが必要となる。
「今年後半に、一般ユーザーが電子申請を行いやすくするための製品を提供する予定だ」とチゼンCEOは話す。
今後、電子申請を行っていくためにこのソリューションを活用する場合、アクロバットリーダーのように無償で製品は提供されていくのだろうか。
これに対してチゼン社長は、「アクロバットリーダーは今後も無償で提供し続ける」と、新しいソリューションをどういう形態で提供していくのかについては明言を避けた。
新しいソリューションが現在のアクロバットのように文書を作成する側だけが有償で、あとは無償という形態であれば問題はない。
しかし、エンドユーザー側にもなんらかのコスト負担が必要となると導入にも支障を来すことになるだろう。
果たして、アドビではどういう形態での提供を考えているのか、今年年末に登場する製品が要注目である。
アドビのような外資系ベンダーまでが本気で取り組むほど、日本の電子政府市場は大きなビジネスチャンスだといえる。このビジネスチャンスを特定ベンダーだけではなく、広くさまざまなベンダーが参加できる入札制度を作ることができるかは、日本政府の方針姿勢を示す尺度となりそうだ。(三浦優子)
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