実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>15.セカンダリー市場の投資判断

2002/06/17 16:18

週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載

 IPO(新規株式)投資は、上場日前に販売される少ない公募株の入手が困難なことから投資をあきらめる投資家も多い。上場後の売買は自由に行えるものの、初値が大きく上昇するイメージが強すぎることや、上場後の株価が低迷しがちなこともあって手が出しにくいというのが実情のようだ。しかし、これは短期的な要因。中期的、長期的な観点に立つとIPO市場というのは根強いファンも多く、株式投資による収益のほとんどをIPO投資であげている投資家もいる。

 マーケット・ウォークが6月に創設した「IPOファンクラブ」には、IPO市場を有力な投資先として期待を寄せる投資家が短期間のうちに数十人に達した。IPO投資は実際に上場したあとのセカンダリー市場でも注目度は高く、通常の株式投資同様に収益を上げるための労力を惜しまない投資家が多い。難しくて読みにくいと指摘される目論見書でさえ、「隅から隅まで目を通す」ことや、証券会社を回って入手する努力、投資したい企業に電話で問い合わせを入れるなど、自分の目や耳で確かめるというメンバーもいる。そこまでやっても投資をするうえでのリスクヘッジが約束されたわけではない。

 IPOをするベンチャー企業は、基本的に急成長の見込める企業であり、日本の将来を背負う企業へと発展する可能性を秘めている。短期的な株価の変動はあるものの、本当に将来性のある企業の発掘は、ベンチャー市場やIPOをする企業のなかの方が見つけやすい。IPOの初値は単に人気や相場環境に左右される側面が強いものの、初値水準が低く決まったり、上場後の短期間に株価が下がりきってしまったところで投資するなど、投資チャンスは公募株を入手することだけではない。上場後に株価が暴騰することも、珍しいことではないからだ。

 IPO市場の特徴は、類似企業が少ないこと。身の回りでは定着した感さえある「100円ショップ」や動画配信サービス、携帯電話のコンテンツ関連など、新しい分野でその市場が将来的に大きく成長するとなれば、企業は競合という「ゼロサムゲーム」ではなく、住み分けができる。ビジネス領域の市場が拡大するとの読みから、実際の企業を選択していくことは、投資において大きなチャンスとなる。液晶に代わるとして注目される有機ELや、ここ数年のテーマにもなっているバイオ関連などが大きな市場となって世の中の生活を変えていくものであるとするなら、その分野で特許や独自の技術をもつベンチャー企業の将来性に投資することは、それほど難しいことではない。上場後でも充分に投資チャンスは転がっている。
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