進化するECビジネス
<進化するECビジネス>ウィークエンドホームズ社 建築家・施工会社と消費者をつないで最適な住宅を提供
2002/06/10 16:18
週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載
地方販路の拡大で売り上げ増を目指す
ウィークエンドホームズ社は、首都圏中心の営業から地方への販路を拡大する。森本社長は、「建築家は、『消費者が設計図を本当に購入してくれるのか』、『自分の設計図を流用されるのではないか』という不安をもつ。一方、消費者は、『建築家が予算内でよい設計図を作ってくれるのか』という疑問をもつ。インターネット販売ではお互いの顔がみえないため、こうした不安や疑問が顕著に表れる」と指摘する。同社では、消費者を直接訪れ、建築家との仲介を行っている。しかし従業員は10人足らず。「東京近郊での営業で精一杯なので、施工会社と手を組むことで地方に販路を拡大する」という。まずは大阪近郊の施工会社と提携する。今年中には、ほかの施工会社とも提携し、数拠点で展開する構えだ。
また、建築家の設計図の著作権サービスを開始した。これは、インターネットを通じて図面を登録しデータベース化したうえで、電子証明書を発行するというもの。著作権紛争で問題となる著作物の本人確認や創作時期などを証明できる。「建築家の許諾を得たうえで、登録した設計図面をインターネット運営会社に販売する」としており、「イサイズ」との提携を検討している。「今まで、消費者からの依頼で設計図面を書いたものの、その消費者がほかの図面を採用したことで不採用となった図面が1200枚にのぼる。その図面は、その消費者の希望したものではなかったとしても、ほかの消費者にニーズがあるかもしれない」と判断したためだ。こうした取り組みを行うことで売上高を増やしていく。01年度の売り上げは約1億円を見込んでいる。さらに「03年度には株式上場を目指す」と意気込む。同社のサイトは、売り手である建築家・施工会社と、買い手である消費者をつなぐ。「無料住宅設計コンペサービス」が特徴だ。
住宅建築を希望する消費者は、同社のサイトにアクセスし、敷地の形状や床面積、建築デザイン、予算など150ほどのチェック項目に答える。この情報は、1000人以上の建築家に公開される。この消費者からの情報に対して「設計しましょう」と手を挙げた建築家(先着20人)が設計図面を同社に送る。送られた図面のなかから、依頼した人に最適な設計図面を同社が提示。依頼した人が気に入れば契約成立となる。施工会社には、同社から施工の募集をかけ、見積り額が最適な施工会社を紹介する形となる。施工会社の登録数は2400社を超える。契約の際、消費者は手数料として同社に50万円支払う。また、建築家と施工会社もそれぞれ仲介手数料として総建築代金の6%を同社に支払う仕組みとなっている。契約件数は、02年5月に時点で約60件。取引額は30億円にのぼる。最近ではユニークユーザー数が月平均で500人に達し、月に5-6件のペースで契約が成立している。
日本の住宅は個性がない住宅事情をネットで解決
ウィークエンドホームズ社の設立は00年7月。店舗の内装設計コンサルティングを手がけていた森本社長が、ハウスメーカーの提示した素材に不満を抱いたことが発端。同社のCOOである大場壹朧氏も、ランドスケープデザイナーとして、門や駐車場、庭などの建物周辺の設計に長く携わってきたなかで、建物に個性がなく、しかも個性を隠すためのデザインが増えていたことに物足りなさを感じていたという。「住む人のコンセプトに合わせた家が建てられないのはなぜだろうかとお互い疑問を抱き、2人で設立した」(森本社長)。日本には、一級建築士が約20万人いるといわれている。だが、建築家は、消費者の希望にかなう家を設計できることをアピールする場がなく、ほとんどが建築士としての本来の仕事をしていない。事務所を構えても大手の下請けや大構造物の一部だけを設計していることが多いという。
そこで、能力があるのに仕事がない建築家と、家をオーダーメイドしたいが建築家を探す手段がない消費者を結ぶ方法として、ネットを選んだ。消費者のメリットとしては、自分の希望する住宅を予算の範囲内で建てることができる点。建築家にとっては、自分を売り出す場となる。コンペ方式なので技術力にも磨きがかかる。施工会社も取り引きの拡大につながる。「腕時計やバッグなどは、自分の気に入った物を身につけられる。だが、住宅に関しては、満足のいく家に住める手段が限られていた。ハウスメーカーがあらかじめ決まった設計プランを消費者に提供することとは違った提案で、消費者に付加価値を提供していく」と強調する。インターネットビジネスについて、森本社長は、「今後ブロードバンド環境が整えば、メールで設計図をやり取りするようになるだろう。消費者に迅速に返答できるようになるため、サイトの価値も高まるのではないか」と分析する。
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