変わるかシステム入札
<変わるかシステム入札>10.プロシード(下)
2002/06/10 20:43
週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載
曖昧さを排除する
――米国では、ITといえどもほかの製品と区別なく、妥当性をチェックする方向に変わってきているわけですね。西野 例えば国防省では、数々の失敗の教訓から、ウェブ上に導入したITシステムのベンチマーク結果やデータを公開しています。
これは誰でも見ることができるわけではないのですが、登録した業者であれば閲覧可能になっています。
――失敗を前向きに生かしていく点は、日本でも見習うべきだと。
西野 プロジェクトマネジメントをきちんと行っていくと、曖昧な部分が消えて、個人の能力がはっきりと見えてきます。
例えば、1人のプロジェクトマネージャは同じ箇所で失敗するというような癖も見えてくる。個人の能力が見えて評価をしやすくするのがプロジェクトマネジメントです。
「10年SEをやったんだから、次はプロジェクトマネジメントをやれ!」という調子で人材を振り分けているケースがあるようですが、これは誤りだと思います。
プロジェクトマネジメントに適した人材をきちんと選んで配置していくべきです。
日本人に、プロジェクトマネージャとは何をすべきで、どんな資質が必要か書かせると、「体力と気力です」という答えが当たり前に返ってきます(笑)。
それでは丼勘定にしかならない。プラン・ドゥ・チェック・アクションというサイクルに従ってきちんと物事を進めていかなければならない。
丼勘定という考え方を排除し、科学的に物事を実行していくのが本来のプロジェクトマネジメントです。
――プロジェクトマネジメントを徹底することで、曖昧さが排除されていきますね。
西野 プロジェクトマネジメントソフトで代表的なのは、「マイクロソフト プロジェクト」ですが、このソフトの日本での売れ行きは、欧米に比べて大きく下回ってます。
残念ながら、ITシステムを構築するシステムインテグレータでも、このソフトを使ってプロジェクト管理を行っているところはきわめて少ない。実はこのソフト最大のライバルになっているのがエクセルなんです。
でも、エクセルと電卓を使っていては高度なプロジェクト管理を行うのは難しいと言わざるを得ません。
官公庁に限らず、IT業界側も近代的なプロジェクトマネジメントを行っていくことで、プロジェクトのやり方を変えていくべきだと思います。
――官公庁だけでなく、IT業界自身も近代的なプロジェクトマネジメントの導入が遅れているということですか。
西野 プロジェクトマネジメントの教育を行っている当社でも、プロジェクトマネジメントを導入するには大変な手間がかかります。
導入はそう簡単ではないのは私自身もよく理解しています。
しかし、これまでの投資といえばR&D部門でしたが、プロジェクトマネジメントのために投資を行っていくという視点をそれぞれの企業がもつべきではないかと思っています。
官が変わらないのであれば、民の側で積極的に変化していくべきではないでしょうか。(三浦優子)
【略歴】
西野 弘社長
(にしの・ひろし)1956年4月、神奈川県生まれ。79年早稲田大学教育学部卒業。全日空商事、丸高産業、トランス・メディア・リソーセスを経て、91年プロシードを設立、代表取締役社長に就任。総務省次世代携帯ビジネスモデル研究会委員、沖縄県産業振興審議会委員、2001年未来基金会長(ビルゲイツ印税基金)などを務める。
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