攻防! コンテンツ流通
<攻防! コンテンツ流通>10.コンテンツ配信の事業リスクを分散化
2002/06/10 16:04
週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載
プロデュース・オン・デマンドは、主要プロバイダやADSL事業者などの回線を使い、大容量の映像コンテンツを配信する技術をもつ。00年11月に設立し、今年度(02年12月期)で第3期目(実質は2期目)となる。最近では、有線ブロードネットワークスと楽天が共同で設立した映像配信サイト「ショウタイム(http://www.showtime.jp/)」(高垣佳典社長)の映像配信を受注した。
菊地社長は、「当社は、視聴者からの実際の収益に基づき配信手数料を徴収する方式を採用しているのが特徴。つまり、視聴者が獲得できなかったにも関わらず、配信料金だけをちゃっかり頂くということはしない。これではコンテンツ制作者の事業リスクばかりが高まり、いいコンテンツが出てこない」と、収益に応じた配分をする。
例えば、収益に対してコンテンツ制作者がその65%、回線使用料として通信事業者に25%、配信手数料としてプロデュース・オン・デマンドが10%という具合に課金する。
このように、ただコンテンツを流して回線を使えばチャリンチャリンと従量課金でお金が落ちる仕組みではない。コンテンツを配信してきちんと利益が出るよう、コンテンツ制作者に対して積極的にプロデュース(制作協力)することで、より収益を得やすい方向に導く。
「プロデュースの過程では、『このコンテンツはいくらなら売れるのか』、『スポンサーがつかないと収益的に厳しいのか』、『コンテンツの中身をこうしてください』と細かく注文することもある。この結果として収益があがり、当社の利益にもなるという計算だ」
「映画でたとえれば、インフラを自前でもつ通信事業者が映画館というハードウェアだとする。すると当社は、この映画館にコンテンツを届ける“配給会社”という位置づけになる。しかも単なる“配信会社”ではなく、視聴者のニーズをきちんと把握し、これに見合うコンテンツを探し出して配給する。上映した結果、収益が出れば、多くの分け前をもらえるし、そうでなければ次のコンテンツ探す」と話す。
コンテンツ配信という“事業リスク”をお互いに折半し、よりよいビジネスモデルをつくることに主眼を置く。これにより、従量課金が中心の通信事業者との相違点が明確になり、同社の差別化につながる。
音楽関連など、インターネットやパソコン向けにコンテンツを出したがらない動きがあることについて、菊地社長は、「最終的には市場原理で動く。コンテンツ業界のなかでも、音楽CDやDVDといったパッケージ媒体にこだわらない制作者が増えるなど、地殻変動が起きつつある」と分析。
「エイベックスなどは、パソコンで聴けない音楽CD(CCCD)を率先して採用する一方で、著作権管理ができる方式を使い、積極的にインターネットへ映像を流している。レコード会社などが展開するプロモーションの部分はどうするのかという問題は残るものの、いずれ既存の仕組みのなかから飛び出てくる制作者をわれわれコンピュータ業界としてしっかり受け止められる器を今のうちから準備しておくことが大切だ。コンピュータ業界と対立する構図になってはならない」と話す。(安藤章司)
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