変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札>8.首都圏コンピュータ技術者協同組合(下)

2002/05/27 20:43

週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載

 地場の中小ITベンダーが地方自治体のITシステム構築にかかわっていくために、首都圏コンピュータ技術者協同組合の横尾良明理事長は、「コンソーシアム方式」を提案。これにより入札制度に透明性が高まるうえ、将来のメンテナンスも行いやすくなるメリットがあるという。

コンソーシアム方式

 ――コンソーシアム方式では、いくつかのステップを踏んでいくことで、透明性の高い入札が可能になるということですが、具体的にどのような手順をとるべきだと提案していますか。

 横尾
 まず、ステップ(1)として、行政、大学教授、地域住民、ITコーディネーター、コンサルティング会社、さらに必要に応じたメンバー5、6人による核となるメンバーをつくります。

 ステップ(2)では、システム構築業者に参加してもらいます。これは、あくまでもオブザーバーという立場で、対価は払わないことを前提に参加してもらいます。

 そこでステップ(1)で決定したメンバーと業者で、予定価格、発注仕様書、入札条件などがどうあるべきかを決定していくのです。

 それだけの人数でそんな作業をするのは大変手間がかかるように感じますが、メールを使えば対面して話し合うのは月に1度程度で十分です。

 メールを使っていない人がITシステムに関する基本部分を決定するのはおかしいともいえますから、メールを使うことで基本的なITスキルの選別もはかれるわけです。

 さらに次の段階で、管理を行う業者を決定し、さらに詳細を行う業者を決定します。段階ごとに異なる業者を選定する仕組みとすることで、一部の業者が自分たちに都合のよいシステムづくりを行うことができなくなります。

 ――ひとつの業者がシステムを請け負うことで起こる問題を回避するわけですね。

 横尾
 複数の業者を使うことで、ひとつの業者になにかトラブルが起こった場合も、リカバリーがしやすくなるというメリットも生まれてきます。

 1業者がシステムすべてを請け負う形態では、他社にはシステムを直すことができないということになりがちです。

 複数業者がひとつのシステムに参加することで、伝達のための記録がきちんと残りやすいなどのメリットも出てくるわけです。

 ――すでにコンソーシアム方式を採用している例はあるのですか。

 横尾
 100%仕様書で提案したものと同じというわけではないですが、新潟県柏崎市がコンソーシアム方式を実践しています。

 ――徐々にではありますが、地方自治体のシステム入札も変わってきているわけですね。

 横尾
 どんどん変わってきていると思いますよ。ただし、具体的な部分で問題はたくさんある。

 例えば、民間業者と契約を結ぶ際の基準として、「高度IT技術者の配置」とあります。しかし、果たして高度とは何を指すのか。

 ITの専門家ではない官庁や地方自治体のスタッフが技術者の質が高度なのか、そうではないのかなんてわからない。

 だったら、それに対してどういう対応策をとっていけばいいのかといった具体的な問題はこれから解決していくべき課題でしょう。

 高度技術者を見極めるために、複数のITコーディネータと契約し、きちんとした審査を行なうといった方法をとることも可能ですし、対策のとりようはたくさんあります。

 制度そのものは以前と変わりつつあるのですから、今度は具体的な部分をどんどん変えていくべきではないでしょうか。(三浦優子) 

【略歴】
横尾良明(よこお・よしあき)
1950年北海道小樽市出身。84年ソフト開発を行うシグマバンテアンを設立。89年首都圏コンピュータ技術者協同組合を設立し理事に就任。現在、首都圏ソフトウェア協同組合・理事長、中小企業近代化審議会・臨時委員、全国ソフトウェア協同組合連合会・専務理事、協同組合東京官公需組合連盟・副会長などを兼務。
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