WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第106回 サン、幹部の次ぐ退任

2002/05/27 16:04

週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載

 サン・マイクロシステムズのマイケル・レーマン財務最高責任者、ITサービス責任者ジョン・シューメーカー氏に続き、エド・ザンダー社長も退任することを、同社スコット・マクネリーCEOが02年5月上旬発表し、サン・パートナーへの波紋を広げた。同CEOはその発表時「ザンダー社長はサン発展の最大貢献者であり、サンの企業シンボルであった」と同氏退任を残念がった。(中野英嗣●文)

パートナーに衝撃

 ザンダー社長はHPに買収されたアポロコンピュータ出身で、サンに15年在職しサンパートナーの心の支えであったと多くのパートナー幹部は語る。サンパートナーのAMC副社長スティーブ・イスラエル氏は、「ザンダー社長はサンパートナーを活性化させた最高の功労者だった。彼の意志を継ぎわが社はマクネリーCEOと共にサン再建に全力を傾ける」と語った。

 サンSIerのeフォース副社長ジョン・ヒッチコック氏は、「同社長を4月のサンパートナー会議で見掛けたばかりでわが社の衝撃は大きい。同社長はパートナーにとって心強いリーダーであった」と語る。あるパートナー社長は匿名で、「ザンダー社長はエンジニアリング・ワークステーション専業の小さいサンを大きく成長させ、IBMメインフレームが中央に鎮座する大企業データセンターに次々とUNIXサーバーの橋頭堡を築き上げた。この社長を失うことはサン、そしてパートナーにとっても痛恨事だ」とショックを語る。米著名ITアナリストの1人は、「サンはLinux市場への参入も表明し、それまでのSPARC、Solarisのシングルプラットフォームというサン独自の戦略的アーキテクチャも放棄してしまった。業績も低迷しつづけ、株価も危険水域に落ち込んだ。同社株の売り浴びせ現象も起きて楽観は許されない。この時期の社長退任には戦略の食い違いなどの裏事情の存在も考えられる」と分析した。米IT業界ではHPのコンパック買収合併で、多くのチャネルに動揺も広がっている。

 とくにHP、コンパックのエンタープライズ専業チャネルは、新HPのUNIXサーバーの先行きに不透明さを感じ、新HP陣営からの離脱心理も強まっている。しかしその行き先は、サンの社内的混乱も考えるとIBM1社しかない。IBMのエンタープライズパートナー網は世界的にがっちり固められている。たとえUNIXサポート力が強くてもユーザー奪取は難しい。「またサンユーザーのSolaris信心も強く、この牙城は簡単には崩せない。従ってHP、サン陣営からの離脱心が働いても、米チャネルには駆け込み先がない」と先のITアナリストは語る。そのためこれまでザンダー社長との関係が深かった有力サンSIer幹部は、マクネリー会長やパートナー担当ギャリー・クリムス副社長とのパイプを広げようと動き始めた。しかし、マクネリーCEO焦眉の課題は「株価をまず安全水域の10ドルまで上昇させること」とウォールストリート・ジャーナルは解説した。

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