攻防! コンテンツ流通

<攻防! コンテンツ流通>8.PtoP技術でコンテンツを配信

2002/05/27 16:04

週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載

 

 サーバーなしで大規模なコンテンツ配信を実現する――。分散協調技術とPtoP技術(サーバーを介さずにパソコン同士を直接接続する仕組み)を組み合わせたコンテンツ配信網「シェアキャスト」のコンセプトだ。通信技術研究のアンクル(齊藤隆之社長)と、コンテンツ制作のビットメディア(高野雅晴社長)が共同で開発した。

 シェアキャストとは、パソコン同士をピラミッド状につなげて、コンテンツを配信する仕組み。

 1台のパソコンがほかの2-3台にコンテンツを中継することで、1台が3台→9台→27台と、ネズミ算式に配信先を増やせる。10段ほど重ねると概算で数千から数万台つながる。

 最大のポイントは、①大型の配信サーバーが要らない、②自由に配信網への出入りができる、③単なるファイル交換と異なるため、権利者が意図しないコピーを防げる――の3点。

 とくに②は、上位のパソコンが抜けても、自動的に接続を回復する「自律修復」機能と、新しく配信網に入るときも“ぶらさがり数”が少ないパソコンへ自動的に割り振る「自律分散」機能を持ち合わせている点が特徴だ。

 1.5Mbps程度のADSL回線で実験したところ、100kbpsほどの速度が出た。ADSLの場合、下り回線は速いが、登り回線が遅い。例えば、上り回線が500kbps程度のADSLで、自分の下にぶらさがる3台のパソコンにコンテンツを配信した場合、100kbps強の帯域が限界となる。

 アンクルの齊藤社長は、「今後、上下ともに速い光回線になれば、数十Mbpsの配信が可能になる。従来のサーバー集中型では、数千台のパソコンから同時に20Mbpsの帯域を要求されて応えられるサーバーなかった。現状のADSLについても、手持ちのパソコンから同時に何十万人にコンテンツを配信する技術は、これまでなかった」と、サーバーというボトルネックを解消できると強調する。

 ただ、解決すべき問題もある。①オンデマンドができない。②遅延が発生する――などである。

 オンデマンドとは、利用者が好きなときに好きな番組を視聴できる仕組み。現状では、時間を決めた配信しかできない。また、コンテンツを1回中継すると数十秒から1分程度の遅延が発生する。これが10台経由すれば、5分から10分ほど遅れる計算になる。

 齊藤社長は、「解決策はいろいろある。当面は、サッカー中継などでカメラ1台の映像を数万人でシェアしたり、個人のパソコンから自由に配信したり、用途を選べば、十分実用に耐え得る」と話す。

 ビットメディアの高野社長は、「今年度(02年12月期)下期で商談をまとめ、前年比100%増の4億円を目指す」と、シェアキャストを足がかりに売上倍増を図る。(安藤章司)
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