OVER VIEW
<OVER VIEW>幕が開くエンタープライズLinux時代 Chapter3
2002/05/20 16:18
週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載
米IT業界のLinuxへの期待
●ITベンダー、アナリストもLinux普及に強気多くの米アナリストは01年に米エンタープライズのミッションクリティカル分野にLinuxが本格的に普及し始めたと分析する(Figure13)。
ギガのアナリスト、ステーシー・クァンド氏は、「IT投資効果追求が厳しくなり、高価なサンOSや改訂されたマイクロソフトのライセンス料に悩むIT部門がフリーOSのLinuxに飛びついた。Linuxはマイクロソフト、サン市場を浸食する現実的道具になった」と語る。
ガートナーのジョージ・ワイス氏は、「UNIXからLinuxへのアプリケーション移行はきわめて容易なため、またLinux2.4の大きなスケーラビリティでLinuxがエンタープライズプラットフォームに転換した」と分析する。
ギカのチーフアナリスト、ロブ・エンダール氏は、「マイクロソフトがOSライセンス制を改訂したことで、ユーザーはOS料金が高くなったと感じてしまった。マイクロソフトは自らLinuxがウィンドウズ市場に参入する窓口を広げてしまった」と皮肉な分析をする。
Linuxディストリビュータトップのレッドハットは、「安いLinuxは既に大企業のフロントエンド、ミッドティアサーバーで一定地位を獲得し、02年後半からバックエンドのデータセンターへの侵入を開始する。当社は世界的大企業のLinux導入サポートで手いっぱいとなり、ウィンドウズからの移行組み小企業まで手が回らない」と悲鳴をあげる(Figure14)。
旧コンパックのLinux担当、ジュディ・チャービス・ディレクターは、「当社のLinuxユーザーの大半はウォールストリートの金融、大手通信サービス業だ。Linuxはその源からしても中小企業専用のOSではなく、大企業向けプラットフォームであった」と、大企業データセンターへのLinux普及の雪崩現象を予告する。
IBMのLinux担当スティーブ・ソラッゾ副社長は、「02年前半にIBMがLinuxサポートする世界の大企業数は1000社に達し、Linux関連ソフト売上高も01年の10倍、10億ドルに達する。Linuxはウェブミッションクリティカル、ラインビジネスの基幹サーバーだ」とLinuxへの自信を語る。
キー・リンクのマット・リーブス副社長は、「Linuxはサン上位サーバーを崩し、下位では大企業1社で数百、数千台のウィンドウズサーバーをリプレースし、サン、マイクロソフトにとっては脅威」と分析する。
●サン戦略をLinuxディストリビュータが批判
サンはLinux攻制に耐えられず、02年2月に自らLinux市場への参入を発表し、Linux陣営の一員になったことを強調する。
同社スコット・マクネリーCEOは、「サンのソラリスとLinuxは元々UNIXを源とする親類OSだ。ユーザーの関心はプロセッサやOSにあるのではなく、サービスプラットフォームだけに注目するようになった。そのためサンは自社サービスプラットフォームSun ONEをLinuxへも対応することが、当社Linux戦略の基盤だ」と説明する。
しかし、これまでLinuxとの距離を置き続けたサンのLinux戦略に関しては、Linuxディストリビュータが連名で批難のレターを発信した(Figure15)。
当レターでは、「サンはLinux陣営参入を大々的に発表しながら、IBM Linuxメインフレーム打倒を訴える姿勢は理解できない。サンは自社ソラリス凋落を救うために、うわべだけのLinux戦略を発表し、本気でその普及は考えていないのではないか」と、サン批判の語調を強め、さらに次のような懸念を表明した。
「サンはUNIXのようにLinuxにダブルスタンダードを設け、Linux普及を阻害するのではないか」
この連名レター発表直後、レッドハットはサンの上位ソラリスサーバーに十分対抗できることを訴求した同社エンタープライズLinux「Advanced Server(アドバンストサーバー)」を発表し、サンへの対抗を明確にした(Figure16)。
当OSへの支持表明にはIBM、デル、旧コンパックなど反サン陣営がこぞって参加した。このOS発表でレッドハットは米SIerから技術的にもトップのOSベンダーになったと評価されている。
●デスクトップへも飛び火
Linuxがサーバーで一定の地位を獲得すると、当然次の焦点はデスクトップとなる。
米国でもまだLinuxがデスクトップでどのような位置づけになるかは明らかでない。サンのマイクロソフトオフィス類似の「Star Office(スターオフィス)」なども使われているが、その程度は微々たるものだ。
しかし、LinuxサーバーでIT投資削減に満足し始めた米企業がデスクトップでも当OSを求め始めた。それには使い慣れたオフィスアプリケーションのLinuxへの移植が不可欠になる。
マイクロソフトにもこの要求がレッドハットなどから寄せられていると、マイクロソフト顧問弁護士ステファニー・ウィーラー氏は次のように語る(Figure17)。
「当社はレッドハットとシスコからオフィスをLinuxへ移植するよう圧力をかけられた。しかし当社はウィンドウズ上のオフィスに多額の研究開発費を投入しているので、この移植をやることはない」
世界一の量販店となったウォルマートのIT部門が「ウィンドウズを含めて何のOSもインストールしない超安値、400ドル以下のノンOSパソコンを店頭販売したところ、爆発的人気を呼んでいる」というニュースが02年3月米国パソコン業界に飛び交った。
このノンOSパソコンの販売は、コンプUSAなども試みたが、マイクロソフト圧力で断念したという経緯もある。それだけ米ユーザーは自らパソコンOSも選択したがっているのだ。
このような状況はLinux普及後進国であるわが国にも伝幅している。日本国内市場ではサーバーでもLinuxは僅かなシェアしかもっていなかったが、05年まではLinuxサーバーが圧倒的に高い伸びを示すと、IDCは発表した(Figure18)。
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