実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>11.大株主の思惑を見極める

2002/05/20 16:18

週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載

 新規公開(IPO)企業の設立経緯はさまざま。通常のベンチャー企業の場合は、起業を目的に独立した経営者が自己資金を資本金に充てて、株式会社なら最低資本金1000万円、有限会社なら300万円からスタートする。商法改正によって最低資本金が引き上げられたことで、当初の資本金を調達するだけでも大変だ。「ネットベンチャーブーム」のときにはビジネスプラン(モデル)という机上の論理を唯一の武器に、開業資金として多額の資金調達をするケースもあったが、過度の期待感とは裏腹に収益モデルの実現が難しく、下火になってしまった。大企業の子会社や合弁会社の資本金は100%親会社であったり、合弁企業がほぼ半々の出資比率となることが多く、設立時から数億円単位の資本金でスタートするのが一般的。

 この場合の株主は特定企業に限られるが、最低資本金1000万円や数千万円程度の資本金でスタートした企業がIPOをする場合には、第三者割当増資をともないながら資本金を潤沢にする資本政策を進めていく。その増資にともなって新たに増える大株主の思惑を見極めることがIPO投資においては重要なポイントになる。いまでは耳慣れた業種としてベンチャーキャピタルの存在がある。未公開企業などに投資・育成を行い、IPOによって高まった企業価値の株価で保有株式を売却するというビジネスを展開している。かつてネットベンチャーの株価が数百万円にも跳ね上がったときは、額面5万円の株式が100倍の500万円になることも珍しいことではなかった。このため、第三者割当増資の発行価格が仮に100万円でも、投資したいベンチャーキャピタルは多かった。

 一方で、例えばコンビニのローソンがIPOをした際には、大株主のダイエーが財務内容の改善を目的に保有株を放出することで話題を集めるなど、さまざまな企業の思惑が絡みやすい。大株主にベンチャーキャピタルが名を連ねている場合など、IPO後に「保有株式を市場で売却に走る」と、需給の悪化懸念をもたらすことも多い。経営者や同族の株主といった安定株主が保有株式の売却に回ると、市場に出回る株数が多くなり、株式の買い占めやTOB(敵対的買収)の的になりかねないため、企業防衛の観点から経営者などが保有する安定株数は過半数以上を保有する必要がある。企業と銀行間での「持ち合い株」と呼んでいるのが、この安定株主づくりのために行われてきた慣行である。個人投資家は、売ることを目的としている株主と、売らないことを前提としている株主の構成比を注意深く見ておく必要がある
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