IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~
<IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~>第2章 35.電子商取引の法的整備(上)
2002/05/13 16:18
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
経済産業省では、00年4月に産業構造審議会内に情報経済部会を立ち上げて、電子商取引に関するルールづくりの検討をスタート。最初に、電子商取引の特質に対応したルール整備の3つの原則を策定した。(1)誰でも参加できる→安心して取引に参加できる環境の整備。(2)民間主導(多様性、スピード)→事前規制から事後の対応へシフトする(規制緩和、迅速な紛争解決の提供)。(3)ボーダレスな市場形成→国際整合性の取れたルール整備を進める。これに基づいて新しい法整備が進められてきた。準則という形態を取ることで、(2)の電子商取引の多様性やスピードに対応しやすいという効果もある。準則は、情報経済部会の下に中山信弘東京大学教授を中心とした5人の法学者で構成するルール整備小委員会を設置して取りまとめたもので、電子商取引で想定される問題について現行の民法、消費者契約法、知的財産法、新たに制定された電子契約法などに照らして中立的な解釈を示した。
民事法の“解釈”は最終的には裁判所で示されるものであるが、判例を待っていては電子商取引の世界のスピードに遅れてしまう。こうした問題に対応するとともに、事業者側の「リーガル(法的)リスク」を事前に軽減する仕組みが、「準則」と言うこともできる。準則で、できるだけ明確な解釈を示すとともに、昨年3月に閣議決定されたノーアクションレター制度(行政に対する事前問い合わせ制度で、30日以内に回答するのが原則)の活用や、ADR(裁判外紛争処理)機関の整備を進める――。電子商取引に関するルールを国や行政が全て作るのではなく、市場が法の原則に基づいて自主的にルール形成を行っていくことを可能にするのが狙いだ。「司法制度改革の結果、裁判所からも判例として具体的な解釈が示されるケースも増えるだろうし、民間でも議論が活発化してくるだろう。そうした過程を通じて、行政の役割は徐々に縮小されていくだろう」(池谷係長)。
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