変わるかシステム入札
<変わるかシステム入札>6.(社)情報サービス産業協会(下)
2002/05/13 20:43
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
IT業界の実力
――これまで問題視してきたITの政府調達が大きく変わっていく見通しとなった。これを受けて、われわれIT業界側ではどう対処していくべきだと考えるか。佐藤 これから重要になってくるのは、制度が変わったことにわれわれ情報サービス産業側が応えていくことができるかどうかだ。
これまで受注を独占してきた大手ベンダー以外の業者が政府のIT調達を落札したものの、質の高いシステム構築ができないという結果になれば、制度を変えた意味がない。
これまで入札に参加できず批判する一方だったわれわれ情報サービス事業者の実力が試されている。
実力ある情報サービス産業事業者は大手以外にも相当数あるだろう。事業所数は8000社との調査結果が出ているが、実態はもっと多く、2万社あるといわれている。
ただし、多くの事業者は大手ベンダーの下請けとして開発に取り組んできた。それを考えると、企業規模として小さいところが多く、システムの設計から実際の構築までトータルで取り組んだ経験がある事業所の数がどれだけあるのか。
残念ながら、すべての企業がトータルなシステム構築ができる力をもっているわけではない。
ただ、やる前から心配ばかりしていても始まらない。
せっかく10年以上壊れなかった壁が壊れたのだから、積極的に挑戦してみることが大切だ。
――確かに批判するのは易しいが、実際に結果を出すのは容易ではない。
佐藤 大手ベンダーの安値入札は、一部の企業以外は政府調達に参画できないという問題とともに、ソフト・サービスは極端な安値でも構わないという思考を招いている。
これでは自分たちが進んでソフト・サービスには価値がないと宣伝しているようなものだ。
最近、ある地方で地元業者が極端な安値入札を行った例を聞いた。これもソフト・サービスの価値を下げる行為にほかならない。
自分たちで自分の首を絞めるような安値入札を行う習慣は、われわれIT業界側が率先して排除していくべきだ。
大手ベンダー以外の事業者まで、安値入札を行うようではIT産業の未来はない。きちんとソフト・サービスが産業として確立するよう努力していかなければならない。
ITは、ハード、ソフト、ネットワーク、そしてサービスがあってこそ成立する。
だが、日本はハード文化であり、ソフトは“おまけ”という思想が依然残っている。
昨年秋にIEEEが出したレポートでも、日本はソフト産業の後進国と指摘されている。この汚名をそそぐべく、業界を挙げて取り組んでいくべきだろう。
――そのためには、安易な安値入札を行う習慣を排除していく必要がある。
佐藤 正確なソフトウェアコストを確立していかなければ、システムの品質、安全性は確保できない。
今回のみずほフィナンシャルグループのトラブルが示すように、システムの信頼と安定が欠ければ社会的な問題が起こるのが現代社会。ソフトの質を向上させるための努力をIT業界が総意として行っていくべきだろう。
(三浦優子)
【略歴】
佐藤雄二朗会長
(さとう・ゆうじろう)1933年2月20日東京都生まれ。55年3月吉沢会計機入社。58年日本ユニバック発足、入社。81年4月取締役営業本部長に就任。84年3月日本ユニバック退社後、同年アルゴ21設立、代表取締役社長に就任。89年6月社団法人情報サービス産業協会(JISA)労働時間制度委員会委員長、92年6月副会長などを歴任。01年6月JISA会長に就任。
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