実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>10.主幹事を見る

2002/05/13 16:18

週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載

 企業の新規上場(IPO)にともなう増資で新たに発行される公募株式と、既存株主の売出株数を引き受けるのが主幹事証券。主幹事証券は公募売出株数の過半数以上を販売するケースが多く、残りの株式については幹事証券(主幹事、幹事証券を総称して「引き受けシンジケート団」、「シ団」などと呼ぶ)も販売する。国内外の投資家から資金調達するケースでは、外国向けの販売を外資系証券が引き受けることもあり、主幹事が複数になることもある。最近ではインターネット証券が引受業務に参入して主幹事の1社に入ることもあるが、主幹事はIPOのイシュー(案件)をメインになって販売する証券会社となり、公募価格の設定など、投資家に販売しやすいような値付け業務などを行うが、売れ残ったときに自社で引き取るリスクも抱えている。

 主幹事証券は大型案件になるほど多額の手数料収入が見込めるため、証券会社の収益を支える重要なセクション。法人相手の引受業務はアンダーライターと呼ばれ、「花形」と称されてきた。IPO投資における主幹事証券の選別は、投資家個々人の好みなどもあるが、一般的には株式の販売力にある。とくに大型の案件であれば、IPOをする企業の人気度だけではなく、投資行動を起こさせるような公募価格(公開価格)の設定とともに、何よりも営業力が必要になる。投資家によっては、もっている株式を売って資金を捻出するケースもある。「人気が高い」というイメージをもたせることも重要な販売戦略だ。さらには、大手証券が主幹事を務める場合、IPOをした企業にアナリストをつけて投資家に向けたレポートなどを発信することが多い。中堅以下の証券会社では、アナリストの数も限られているため、フォローの面で弱さが指摘され、多くの案件で主幹事を務めることができないのが実情。

 投資家にとって主幹事選びのポイントになるのは、株価が上昇するための要件や実力のある証券会社を選ぶ傾向が強くなる。さらには、過去の案件を検証することで、主幹事証券の傾向を調べる投資家も多い。実際にIPOをする企業サイドでも、大手証券の安心感とノウハウを評価する声もあれば、中堅証券のほうが抱えている案件が少ないため懇切丁寧に面倒をみてもらえるという意見もある。主幹事を務めることの多い現在の大手証券は野村、大和、日興ソロモンの3社で、準大手として新光、国際などがあるが、主幹事を勤めた企業の特徴や業種、株価動向などをチェックしていくことで、その時々の傾向などを調べることができる。または、投資したい企業の傾向から主幹事証券を選ぶというのも一考だ。
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