攻防! コンテンツ流通
<攻防! コンテンツ流通>6.中古ゲームソフト訴訟 販売店の主張認める
2002/05/13 16:04
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
最高裁判所(井嶋一友裁判長)は、ゲームソフトメーカーの訴えを退け、中古ゲームを扱う販売店の主張を支持した。
1999年の東京、大阪の両地方裁判所、01年の東西の高等裁判所ともに解釈が分かれが、最高裁判所は02年4月25日、最終的に販売店の主張を認める判決を下した。(図)
そもそも、メーカーと販売店の衝突は、メーカーが「中古販売は認めない」と主張した点に端を発する。
メーカーの論拠となったのが「頒布権(はんぷけん)」である。頒布権とは、主に映画など“広く公衆に見せる”コンテンツに認められる、ある種の流通支配権である。
映画は制作者(権利者)が上映する映画館を指定できる。従って、映画の配給会社は系列の映画館をつくり、これ以外には映画を渡さない“配給制度”をつくっている。
仮に一般的な商品でこれと同じことをすれば、明らかに公正な取引に反する。
もし、映画館が上映し終わった映画を別の映画館に中古品として販売できたとする。すると制作者は、映画制作に多額の資金を注ぎ込んだにも関わらず、確実に興行収入を得る担保がなくなる。
このため映画は、「文学的・美術的著作物の保護に関するベルヌ条約=万国著作権保護同盟条約」で頒布権を特別に認められている。
メーカーは、「美しい映像と物語を含むゲームは映画的要素が多く、従って頒布権がある」と主張。
一方、販売店は、「ゲームソフトや書籍、音楽CDから、コンピュータソフトが組み込まれているパソコン、家電製品、自動車に至るまで、“映画”ではないのだから頒布権を主張する根拠はない。ゲームに限って、なぜ特別な保護=頒布権が必要なのか、合理的な理由がない」と訴えた。
最高裁の判決は、(1)ゲームソフトは映画の著作物に相当する、(2)従って、ゲームソフトには頒布権がある、(3)しかし、ゲームは“広く公衆に見せる”映画とは異なり、このため頒布権は、販売店が消費者に販売した時点で消尽=消えてなくなる――と判断した。
つまり、消費者が中古ソフトとして販売店に売却しても、その時はすでに頒布権が消滅しているため、メーカーは口出しできない。いくらメーカー(権利者)であろうとも、ゲームソフトの流通のすみずみまでコントロールする権利はないとした。(安藤章司)
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