進化するECビジネス
<進化するECビジネス>赤い靴 海外書店のデータベースで洋古書に特化
2002/05/06 16:18
週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載
世界7000書店のDBが売り 会員ユーザーは約2万人に
赤い靴ドットコムの開設は00年6月14日。同社の杏橋達磨取締役は、「日本の実店舗で洋書を探すのは難しい。サイトで実現できれば、消費者にとって役立つのではないか」と事業立ち上げのきっかけを話す。赤い靴は、欧米の洋古書データベースを構築したカナダのアドバンスト・ブック・エクスチェンジ(ABE)と提携し、サイトの立ち上げを実現した。書籍のデータ量は2800万冊。米国をはじめ独、仏、伊、英など、世界各国7000書店からの古書データを蓄積している。
サイトの使い方は簡単だ。著者名やタイトル、出版社などのキーワードで検索する。例えば、「シェイクスピア」とキーワードを入力すると、5365冊の在庫情報を表示する。キーワード検索の該当書籍を選択することが面倒であれば、著者名、タイトル、出版社に加え、著書名、初版本、サイン入りの有無、表示価格の高い順・安い順、更新順などを自由に組み合わせて入力することで、自分が探している本を検索できる。
「仕事が忙しく検索する時間がない」、「自分で検索するのが面倒」といった要望にも応える。消費者が希望の書籍を同社にメールで送信することで、専門のカスタマーサービス員が検索結果と書籍代金を返信する。杏橋取締役は、「個別依頼のサービスは、9割方応えている」と自信を示す。
書籍代金は、書籍原価と同社への手数料(書籍代金の15%)、配送料を米ドルで表示。当日の為替レートで換算した合計金額を円で表示する。支払いは、銀行振込もしくはクレジットカードのどちらかを選択する。配送期間は、注文から平均2週間となっている。
サイトの利用料金は無料で、購入する際に会員登録する形となる。
サイトの特徴は、普段めったに目にすることができない絶版写真集や哲学、占星術、古地図など、さまざまな分野の貴重本を容易に検索できる点だ。情報満載のデータベースが最大の武器である。
杏橋取締役は、「海外のデータベースと単に提携するだけでは意味がない。きめ細かい顧客サービスを提供しなければ誰も購入しない」と強調する。
「赤い靴用語集」では、一般消費者が気軽に利用できるよう、書籍の状態や装丁などの専門用語を解説する。「愛書リンク」では、各ジャンルにわたって、各種の文献を公開している個人・公共機関のホームページを紹介。大学教授や個人の蔵書を引き取る「委託お預かり制度」なども設けた。
こうした付加価値サービスにより、会員数は、今年4月下旬の時点で約2万人に達している。購入リピート率は約65%。一般消費者のほか、大学や研究機関などの法人加入も増え始めているという。会員は、米国が7割近くを占めているため、米ロサンゼルスに集荷拠点を兼ねた「赤い靴USA」も設置した。
同社では、自社サイトでのビジネスに加え、企業向けサービスを提供し、ビジネスの拡大を図っている。
今年に入ってからは、「赤い靴パートナー・ブック・ストア」システムを開始。導入企業の開拓に力を入れている。
このシステムは、書籍データベースのサイトを運営する企業や書店が利用できるサービス。海外書店への注文と配送は同社が請負う。導入企業は、絶版本や稀少本などをデータベースとして活用できることがメリットだ。取扱いジャンルが増え、既存顧客への新サービスや、新規顧客の獲得につながる。利用料は初期費用が30万円。導入企業は書籍原価の15%をパートナーフィーとして受け取る。
ほかには、代理店契約のうえで「赤い靴」サイトを活用できる「赤い靴エージェント・プログラム」も設けた。同プログラムは、「赤い靴」サイトのリンク・バナーを貼った企業に対して、注文冊数によってエージェントフィーを支払うというものだ。
同社では、ABEのほか、独自の調達ルートも開拓している。具体的には、ロシアやインドなどの書店とも提携した。「今年中に2000書店は増える」と期待している。今後は、和書の取扱いも行いたい意向で、国内の各書店にアプローチをかけている。
「国内の書店は、既存流通ルートが確立していることに加え、小規模の書店ではインターネットの普及率が低いのが現状だ」と指摘するものの、「ブローバンドの普及にともない、提携のチャンスも生まれるだろう」とみる。
コンシューマ向けのサービスに関しては、「現在では、プル型のサービスが主体だが、各会員ごとに興味がある書籍をメールなどで知らせるといったプッシュ型のサービスも検討している」という。
杏橋取締役は、「最近では、月600~700万円の売上高がある。今年度の売上高は、対前年度比で80%増以上を見込んでいる」と語る。
COMPANY DATA
赤い靴
2000年6月14日に設立。資本金は2000万円(02年1月時点)。当初は1200万円で設立した。従業員は4人。吉野裕社長をはじめ、杏橋達磨取締役、山懸浩司取締役の3人で創業。3人はかつて写真植字会社に勤務していた。
東京・赤坂にあるオフィスは、山懸取締役が別途経営するデジタル印刷サービス会社の一角を間借りしている。
サイト「赤い靴ドットコム」の立ち上げは、会社設立日と同じ00年6月14日。書籍データベースを運営するカナダのABEと提携することで実現した。特徴は、世界7000書店・2800万冊のデータベース。一般消費者に加え、学校や研究所などもサイトを利用している。月間の売上高は、スタート当初は80万円前後だったが、現在は、600~700万円規模にまで伸びている。
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