変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札>5.(社)情報サービス産業協会(上)

2002/05/06 16:18

週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載

大手8割を落札

 社団法人情報サービス産業協会(JISA)の佐藤雄二朗会長は、就任以来、政府のIT調達の問題点を強く指摘してきた。昨年5月のJISA会長就任挨拶では、政府調達が大手に偏っていることをズバリ発言した経験ももつ。「政府調達を担うのが4社で6割強、それ以外の大手も含めると8割を占めるという現状は世界的に類を見ない偏った仕組み」と話す佐藤会長に、現状の政府システム調達の問題点について聞いた。

   *   *   *

――日本政府のIT調達における問題点はどこにあるのか。

佐藤 問題の発端は、1968年、公的機関のシステムは国産のコンピュータ機を導入すべきということが決定した時に遡る。

 その時の慣例が30年を経た今でも生きている。

 本来は公正・中立で透明性をもつべき政府調達にベンチャー企業が参加できず、大手企業偏重という弊害を生んでいる。

 現在でも、政府調達の6割強は大手ITベンダー4社が占めており、それ以外の大手ベンダーを含めると8割にもなる。これは世界にも類を見ない異常な仕組みといわざるを得ない。

 e-Japan重点計画では、2兆から2兆5000億円の予算がとられている。

 情報サービス産業の市場規模である10兆7000億円と比べてみると、25%にもなるというのに、ここに大手ベンダー以外の企業が参加できないというのは非常に問題だ。

 国の政策には、国内産業の育成という側面もあるはずだが、大手偏重が続けば、情報産業の新規企業の育成にはつながっていかない。

 諸外国でこれほど大手企業に参加業者が偏重する例はない。

 例えば米国では、各省庁で多少の違いはあるものの、8000社の企業が調達に参加している。最近では米国内の企業だけでなく、海外の企業にも門戸が開かれている。

 また、海外からも日本の政府調達は問題だという指摘が起きている。

――昨年12月に情報システムに係る政府調達府省連絡会議が設置され、02年度から逐次、調達プロセスを適正化する動きが出てきた。

佐藤 30年間続いてきた問題を一気に改善するための動きが出てきている。今まで全く改善がなかったことから考えると、これは非常にめざましい動きだといっていい。

 これまでの競争入札参加資格では、売上高、資本金、営業年数などで一定の基準を満たす必要があった。

 これではどうしても大手企業だけが入札資格をクリアできることになり、ベンチャー企業には参加できない構造になっていた。

 しかし、これについては、一定の基準を考慮しつつ、運用弾力化措置の改善が図られることとなった。

 落札価格が最も重視される傾向にある総合評価落札方式も、単年度ではなくライフサイクルコストベースでの価格評価など問題点改善案が出されている。

――現在の案はどれだけ実行されていくのか。

佐藤 できるかどうかという点も重要だが、それ以上に改善案が出てきたことが画期的だ。

 これまで、こうした改善案は全く提示されてこなかったのだから、案が出てきたこと自体をまず評価すべきだろう。

 私がJISAの会長に就任した際には、挨拶で、政府調達が大手に偏っているのは問題と指摘した。その時には、良くも悪くも大きな反響があった。

 しかし、改善に向けた動きが出てきたことを考えると、敢えて意見を出したことは良かったと考えている。(三浦優子)

【略歴】
佐藤雄二朗会長
(さとう・ゆうじろう)1933年2月20日東京都生まれ。55年3月吉沢会計機入社。58年日本ユニバック発足、入社。81年4月取締役営業本部長に就任。84年3月日本ユニバック退社後、同年アルゴ21設立、代表取締役社長に就任。89年6月社団法人情報サービス産業協会(JISA)労働時間制度委員会委員長、92年6月副会長などを歴任。01年6月JISA会長に就任。
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