WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第103回 マイクロソフト社長退任

2002/05/06 16:04

週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載

 02年4月、マイクロソフトは同社社長兼COOに01年2月に就任したばかりのリック・ベルーゾ氏が5月1日に退任すると発表した。同時にマイクロソフトは5月に社内組織を抜本的に次の7事業部門に改編した。(1)ウィンドウズクライアント、(2)ナレッジワーカー、(3)サーバー&ツール、(4)ビジネスソリューションズ、(5)CE/モビリティ、(6)MSN(マイクロソフトネットワーク)、(7)ホーム&エンターテイメント。ベルーゾ社長はマイクロソフトにSGI会長から転じて入社以来、おもにコンシューマビジネス担当としてMSN加入者増加やゲーム機Xboxの販売に注力し、社長就任後もその任務に大きな変化はなかった。しかしMSN加入者数で、当分野トップAOLとの格差はますます拡大し、02年02月末には2630万人にも達した。Xboxも欧州や日本では売れ行き不振で目標は下方修正された。ベルーゾ氏は円満退社を強調するが、これは同社のコンシューマ事業の不振が根本にあると観測する米アナリストは多い。

SIer、組織改編を懸念

 一方、ウィンドウズ主体の米システムインテグレータ(SIer)の多くが、今回の組織改編によってマイクロソフトが市場に対して基本的欠陥を露呈することになるのではないかと懸念する。米IT業界は、スティーブ・バルマーCEOとビル・ゲイツ会長が一昔前のように同社全体をコントロールするようになると観測する。しかし多くの米SIerは「7部門への改編は『7つの独立王国』を同社内に誕生させてしまう可能性が高い」と懸念している。米大手SIer、ITテクノロジー社長のバック・アラン氏は、「各事業部門の責任体制を明確化するのは一般論としては前進と把えるべきだが」と前置きして、その懸念を次のように述べる。

 「マイクロソフトのこれまでの企業文化から考えると、組織改編を契機としてマイクロソフトが7つの孤島群に分割されてしまう可能性が高い。各部門が他部門の開発計画に関心を示さず、それぞれの部門が重複した開発をしたり、各部門間でのソフトやサービスの互換性にも問題が出てくることが十分に想定され得る」さらに多くの米SIerは、マイクロソフトの企業戦略が現行の企業向けとコンシューマ向けの両軸から「ウィンドウズ」と「.NET」を基盤とする企業向けの片軸に絞り込まれるだろうと予想する。例えばウィンドウズXPでは企業向けプロフェッショナルとコンシューマ向けホームエディションが明確に区分され、マイクロソフト開発力は企業向け重点に配分されるようになるからだと、その理由を説明する。あるITコンサルタントは匿名を条件に、次のように語った。「マイクロソフトは初心者ユーザーに対応するOS進化の呪縛から逃れたがっている。これからのコンシューマソフトに大きな市場拡大が望めないからだ。フリーのLinuxがコンシューマの主力OSになる可能性をマイクロソフトも否定できない。これに比べ、ウェブ対応の企業IT市場は大きく拡大する」(中野英嗣●文)

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