視点
IT業界の隠れ巨額負債
2002/04/15 16:41
週刊BCN 2002年04月15日vol.937掲載
需要低迷のIT不況であれば、その振幅が大きかったとはいえ、需要循環によりいずれ回復に向かう。しかし今回の不況原因はこれだけではなかったことを、02年2月にBIS(国際決済銀行)が発表した世界のIT産業の負債金額の増加額が実証した。
BISによると、98年から01年までの4年間に世界のIT産業が惹起した銀行借入と債券発行による負債増額は1兆5533億ドル(200兆円)に達する。比率を業界別に見ると、コンピュータとソフトが7.8%、電子機器が11.3%と構成比が小さいが通信は突出して高く80.9%だ。そして地域別には米国が43.8%、EU35.5%、日本5.2%、その他15.5%で、わが国は幸運にもきわめて小さい。
世界経済回復でIT需要が上昇に転じても、とくに通信はこの巨額負債の呪縛からは逃れられない。当業界だけの増加負債は1兆2567億ドル(163兆円)という巨額だ。とくに米国通信サービス各社は、年商を20%以上も上回る巨額負債に苦しんでいるとも報告される。多数のドットコム誕生、そして伝統企業のネットへの過剰期待で生じたネットバブルで、米国には多くの新興通信が誕生し、シスコ、ルーセント、ノーテルなど通信機器メーカー売上高は急伸長した。
これらメーカーは、設備資金調達力の弱い新興通信に購入してもらう金額相当額を、ベンダーファイナンスとして貸し付けた。これで売掛金は即刻クリアされたが、貸し付けとしてそのまま残った。そしてバンドウィズ下降で多くの新興通信は倒産し、貸しはそのまま完全クロの不良債権と化した。
また欧米通信各社はG3携帯電話免許の政府競売で巨額の資金を投じてしまった。国家の一時的財源増がそのまま通信業界の有利子負債として残った。巨額負債の欧米通信各社はブロードバンドへの投資も迫られる。巨額不良債権のわが国銀行の一時国有化論と同じ論議が、欧米通信を巡って語られても不思議でない。
欧米の光網時代はこれで遠のいてしまう。
- 1