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<OVER VIEW>IT市場減速下の米メーカー決算分析 Chapter7

2002/04/15 16:18

週刊BCN 2002年04月15日vol.937掲載

 世界の中・大企業などエンタープライズを主力市場とするITサービス中心のEDS、ユニシス、ストレージのトップEMCの01年決算は明暗を分けた。サービス専業最大手EDSは売上高、利益ともに2ケタ成長となり、IBMを追い始めた。ストレージのEMC売上高は2ケタ減少し、赤字に陥った。かつてのメインフレームの雄であったユニシスは今や、売上高の70%以上をサービスが占めるベンダーになったが、01年は減収減益になった。ストレージではIBM、日立製作所が伸び、ITサービスではIBMとEDSの競合が激しくなった。

明暗分かれるEDS、EMC、ユニシス

●IBM追い上げムードのEDS

 世界的IT不況のなかでも、ITサービス専業の世界最大手EDSの01年決算売上高は前年比12.0%増の215億4300万ドル、純利益も同19.2%増の13億6300万ドルと2ケタの増収増益を達成した(Figure37)。

 現在世界のITサービスでは、トップが売上高350億ドルのIBMグローバルサービス、第2位がEDS、第3位が130億ドル(1ドル=130円換算)の富士通だ。

 90年代中盤に世界のITサービス市場ではIBMが突出した規模に成長したが、98年以降ではEDSの売上高伸長が3年で27.5%となって、IBMの成長率20.9%を凌駕してIBMを追い上げ始めている(Figure38)。

 98年のIBMグローバルサービス売上高はEDSの1.7倍であったが、これが01年には1.6倍にまで縮まっている。しかしIBMとEDSではサービス利益率ではまだ差がある。

 IBMの同部門税引前利益率は98年の11%台が01年には14%弱までとなって、同部門はIBM利益に大きく貢献している。これに対しEDSの同利益率は01年にやっと2ケタの10%台となった。

 EDSの分野別売上高では、ITアウトソーシングが構成比72%ときわめて高い。当分野での世界シェアはIDCによると9.4%に達している(Figure39)。

 これからIT利用形態は自社導入、自社運用による「所有」から、ITサービス会社のIT設備を共用する「利用」へと急速に変化する。このためアウトソーシングに強いEDSのサービス市場でのプレゼンスは急速に高まることが想定される。

 01年米企業IT予算に占めるアウトソーシング費用の比率は20%程度で、03年には30%を越えると米調査会社ダミアン・ロスキルは予測する。

 企業は経営資源をコアビジネスに集中すること、およびeビジネス向けITが24時間365日休みなしの連続稼働になるため、企業ITをアウトソーシングせざるを得なくなるからだ。

 IDCは00年にEDSが獲注した大型アウトソーシング物件として、契約金額41億ドル(5300億円)の米海軍/マリンコープス、同30億ドル(3900億円)の英国政府、同17億ドル(2200億円)のロールス・ロイスなどを発表している。EDSは01年決算からこれら大型アウトソーシング案件売り上げを計上し始めている。

 世界の大型アウトソーシングではEDSとIBMの競合が激しくなっている。IBMは日本国内市場でもNTTグループ、地銀、大手消費者金融、航空で大型アウトソーシングを獲注し、IBM全社のITサービス売上高を支えている。

 IBMはわが国をアウトソーシング活用が米国より進んでいると評価している。このような状況を考えると、EDSの弱点の1つとして指摘されるのが、同社のわが国を含むアジア太平洋の売上比率が5%と低く、米国60%、EU29%に比べると大きく出遅れていることだろう。

 EDSはわが国でもe-Japan計画による電子自治体のアウトソーシング受注体制を強化し始めている。

●大苦戦、ストレージトップのEMC

 エンタープライズ向け大型ストレージで圧倒的強さを誇ったEMCが2001年に大きく売上高を減少し、赤字に陥った。01年EMC売上高は前年比20.1%減の70億9100万ドルとなり、5億800億ドルの純損失となった(Figure40)。

 EMC売上高の90%以上はハードのストレージが占めるが、この01年売上高が17.5%も減少した。とくにEMC決算を厳しくしているのが、大幅な売上総利益率の低下である。

 00年に58.0%であった総利益率は01年には40.1%と、18ポイントも下がった。売上高と総利益率の大幅低下で、01年同社総利益は前年比44.7%減となった。IDCによると、EMCの外部付加型ストレージ売上高は01年に前年比32.6%も減少した(Figure41)。

 EMCが大きく落ち込むなか、IBMは44.6%、日立製作所は14.0%もストレージ売上高を伸ばした。外部ストレージ市場ではEMC、コンパック、HP、ネットワークアプライアンス、サンが軒並み売上高を大きく減らした(Figure41)。

 成長するストレージは、これからのハードの中核ビジネスとなる。トップながらシェアを落とすEMCを追い上げるのは、IBMと日立で、両社はコンパックとともに第2位グループを形成した。

 このようにシェア変動の激しいストレージでは合従連衡が活発にうごめく。日立はストレージを大量にサン、HPにOEM供給し始めた。

 EMCはウィンテル市場での独走体制を固めたデルとの両社ブランド戦略に踏み切った。富士通も国産勢として、UNIXの大型サーバーに注力するとともにネットワーク型ストレージ拡販に注力する戦略を固めた。

●売上規模を縮小するユニシス

 60年から70年代のメインフレーム全盛期には、IBMとユニシス(当時の社名はユニバック)が市場を分け合っていた。ユニシスは01年売上高は60億1800万ドルで、859億ドルのIBMとは大きな格差がついた。01年ユニシス売上高は前年比12.6%減、そして6700万ドルの純損失となった。

 ユニシスはワールドワイドに中・大企業を主力市場とするエンタープライズベンダーである。

 そのビジネスは大きく変革し、サービス売上高構成比が01年には73.9%となった。同社サービス売上高は01年も前年比5.2%伸びている(Figure42)。

 ユニシスはウィンテル仕様の大型サーバーで「ウィンドウズメインフレーム」を標榜した「ES7000」を発売し、HP、デルなどにもOEM供給していた。しかし、当サーバー販売は不振である。このため米ユニシスは富士通が米国で発売したサンSolaris互換の高性能UNIXサーバー「プライムパワー」の販売を開始した。

 ユニシスは富士通とともに、UNIXサーバーを米政府市場で拡販すると発表した。しかし、ユニシスはもはやハードメーカーではなく、ITサービス企業と把えるべきだ。EDSは伸びる世界のITサービスへの対応力の弱いサン、デルのサービスを受託した。
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