進化するECビジネス
<進化するECビジネス>店舗システム協会 ネット活用を促進する小売店向けECサイト
2002/04/15 16:18
週刊BCN 2002年04月15日vol.937掲載
顧客本位がコンセプト
小売店の役割生かす目的で、01年4月からサービス提供日本の小売業者は全国に約140万社あるといわれており、99%が従業員50名以下、資本金5000万円以下の中小小売業者で占める。店舗システム協会の高山れい子専務理事は、「街の小売店は、規模が小さくてもきめ細かな応対や会話の暖かさ、スープが冷めないぐらいの距離にある利便性などで、さまざまな魅力があった」と語る。だが最近は、消費者が大規模な量販店に流れているのが現実だ。高山専務理事は、「近くの小売店で購入しないのは、魅力がなくなったため」と分析する。魅力を取り戻すにも、中小規模の小売店では「店内のスペースを考えると品揃えに限界がある」、「系列チェーン店の場合、限られたメーカーの商品しか取り扱えない」、「大量仕入れの大型量販店に価格競争で勝てない」など、さまざまな問題点を抱える。
こうした背景のもと、同協会では、2001年4月から小売店向けのECサイト「快適生活倶楽部」を立ち上げた。サービス開始のきっかけは、「中小規模の小売店は、財務などでパソコンを活用することはあっても、顧客とのコミュニケーションの手段として活用することは皆無に等しく、まだまだIT化が浸透していない。『快適生活倶楽部』を立ち上げることで小売業のIT活用を促し、流通業の基盤機能を拡大させる」ことにあった。「快適生活倶楽部」は、さまざまな業種のメーカーと“地域密着型”を展開する小売店とを結ぶサイト。小売店はサイトに加盟し、店内にパソコンを設置して、サイトが提供する商品仕入れ情報やサービス情報を入手できる。自店で売っていない商品を消費者に販売できることが特徴だ。商品数は約6000アイテムにのぼる。
加盟店の対象は、ドラッグストアや化粧品店、電気店、米屋、酒屋、呉服屋など多岐にわたる。消費者は、加盟店舗に来店するか、もしくは加盟店舗からの情報(電話やファクシミリ、メール、チラシなど)を通じて商品を購入する。消費者は、50歳以上の中高年層をターゲットとしている。その理由は、地域の消費者支持という小売店本来の役割から考えると、中高年が重要なポジションを占める層だからだ。顔が見える信頼関係で、小売サービス業として再び機能することを求めている層でもある。高山専務理事は、「中高年と若者とでは、行動範囲が異なる。例えば、巨大なショッピングセンターができたからといって、中高年は好んで行こうとはしない。できれば、身近な顔見知りの店で購入したいと願う」と指摘する。
加盟店のメリットは、(1)莫大な投資をかけずにパソコン1台で取扱商品が増える、(2)在庫をもたずに大量の商品が扱える、(3)これまでと違った分野の商品やサービスによって売り上げや顧客を増やすことができる、(4)顧客と対話をしながら必要な商品を検索してあげることで信頼関係が高まる――など。消費者にとっては、(1)自宅の近所にある店舗にいつでも気軽に立ち寄れる、(2)店員と相談しながら、納得したうえで商品を購入できる、(3)商品到着を小売店に指定すれば、在・不在に関わらず都合の良い日時に品物が手に入る、(4)パソコン操作が不要――などがメリットだ。また、商品を供給するメーカーは、加盟店を通じて新しい販路を開拓し、同時に顧客の購買データも把握できる。小売店が加盟するための料金は、入会金が15万円(3年契約)、月額利用料が5000円となっている。
1年間で会員は約1000社に、3種類のサイトで支援強化
「快適生活倶楽部」に加盟するのは店舗ごとがほとんどだが、商店街単位で参加するケースもある。高山専務理事は、「大阪市北区にある天神橋三丁目商店街では、高齢化社会とITを結びつける策として、『快適生活倶楽部』を導入し、『中高年に優しいITの商店街』を実現している」と自信をのぞかせる。「快適生活倶楽部」の加盟店数は、今年3月末の時点で約1000社に達した。だが、「日本全体の小売店数をみると、まだ浸透しているとはいい難い。今年中には、せめて3000社まで加盟店数を引き上げる」と闘志を燃やす。同協会では、小売店のIT化をさらに訴求するために、ECサイト数の拡大に取り組んでいる。
昨年8月には、設備機器や什器メーカーと小売業をつなぐ「e-JAPAN SHOPマート」を実験的に稼動開始した。店舗作りに必要な什器や備品の調達を中心に、設計・施工から新業態の開発や運営までを支援する。今年3月から本格稼動しており、3年後に1000-2000社のメーカー、小売業の5%が加盟することを見込む。今年4月には、住まい関連分野の小売店を支援するECサイト「eライフスタイルマート」を実験的に稼動させている。早ければ今年9-10月、遅くても来年の3月には、本格稼動に漕ぎ着けたい意向だ。高山専務理事は、「メーカーはあらゆる製品を生産することはできない。何でも生産するとなれば、工場や原材料の調達などに莫大な投資やコストがかかる。だが、消費者としては、生活に必要な商品を1か所で購入できることが望ましい。そのためには、消費者の窓口である近所の小売店が『顧客本位』で販売しなければならない」と語る。
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