実践 新規公開株 投資のポイント
<実践 新規公開株 投資のポイント>6.事業内容と資金調達額
2002/04/08 16:18
週刊BCN 2002年04月08日vol.936掲載
IT分野では過去に、行き過ぎた期待感からネット系ベンチャー企業の株価が急騰したが、その後の暴落を契機にいまではネット系企業のIPOはほとんどなくなった。それに代わってシステムインテグレーションや次世代のGIS(地理情報システム)などを手がけるビジネスモデルが高く評価され始めている。
事業内容やビジネスモデルをチェックするうえで重要な点は、事業領域の市場規模が将来拡大するかどうか、という判断にある。市場規模が拡大すれば、たとえ競合他社が現れたとしても売上規模を拡大することができる。ネットのポータルサイトでは、ヤフーの「ひとり勝ち」という見方が定着しており、市場規模拡大のなかで共存できるビジネスモデルであるのかどうかを見極めることも大切だ。市場の成長性に投資するスタンスのなかから企業をピックアップしていく作業は、IPOだけに限らず、すべての投資判断に通じるといえる。
さらなる投資判断として、成長性のある分野で実際にどの企業を選択すればいいのかということになる。企業を特定することは簡単そうで難しい。市場規模拡大の恩恵を最も享受できるのは、スピード経営を実行する企業だ。急成長シナリオとは、市場の拡大と経営スピードがマッチしたときに描けるものであり、IPOをするベンチャー企業にとってこの2つの要素は欠かせない。スピード経営を後押しする手法のひとつがIPOによる資金調達となる。
メーカーであれば、生産ラインの新設や研究開発費への投資など。フランチャイズ展開する飲食業であれば、新規出店の加速に資本投下するなど、今後のビジネス戦略に見合った資金を充分に調達できるかどうかがポイントになる。
資金調達額はかつてのネット系IPOがそうだったように、必要以上に調達をすると、資本金ばかりが大きくなってしまい、資本効率である株主資本利益率(ROE)の低下を招くことになる。
その時々の相場環境によって多少の見込み違いはあるものの、身の丈に合った適正な資金調達額であるかどうかをチェックすることは投資判断に欠かせない。
IPOのなかには何千億円規模で資金を調達するような大型案件もあるが、たいてい需給面での懸念が指摘され、投資妙味が阻害されるケースもある。ビジネスモデルと資金調達額の関係を見るポイントは、双方のバランスを読み取ることにある。
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